無職転生Ⅲ第8話「空中城塞」は、ラプラス戦役の大英雄が住む空中城塞を起点に各地で冒険する新章の始まり。作中人物の疑問に答えていく甲龍王ペルギウスとその使い魔が織りなすファンタジーのド定番描写と、望郷を思わせる和定食。壮大ゆえに切ない、異世界転生の醍醐味のひとつが際立つ回でもある。
ネタバレ回避のあらすじは以下。
ゼニスが回復する方法を知るために、ルーデウスはナナホシの紹介で空中城塞ケイオスブレイカーに住まう魔神殺しの三英雄のひとり、“甲龍王”ペルギウスに謁見することになった。圧倒的な存在感を放ち、ゼニスの話を聞いたペルギウスは意外な人物の名前を挙げる。
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8話のアバンは、ナナホシを先頭に空中城塞へ向かう一行のシーンから。人族が魔族と戦った城址らしき場所に着き、どうするの?と一同疑問に思ったところでナナホシがかすれた音で笛を吹く。
鳴ってないと冷静に指摘するクリフ。すると光輝のアルマンフィが瞬時に現れる。実体化していない時の移動速度は光速なアルマンフィさん。1期のターニングポイント1でも見せ場があったが、今後もたびたび登場する。この後、おそらく4期辺りにギャグシーンで見せ場があるバイプレーヤーである。
キメ仮面のアルマンフィを「来たわね」とサラッと流すナナホシ。六面世界で龍族の加護を受けてきただけあってもはや常連である。
一行のうち、ロキシーはここで脱落。ペルギウスはかつての因縁から魔族を嫌っているからだ。ロキシーは不満げな表情を見せることなく「帰ってきた時にギュッとしてくれればそれでいいです」と一行を送り出す。なお同じルーデウス陣営魔族代表代理のルイジェルドは例外だったりする。

入城前のヒトガミチェック
30cmほどのワンドのような魔道具を手渡され、その道具の力で転移し始める一行。白い空間を抜けていくルーデウス、原作ではヒトガミに会う時の空間に似ているという感想が書かれるが、アニメでは特に言及はない。見慣れた描写で見れば分かる、というところだろうか。
そこは空中城塞ケイオスブレイカー。空を飛ぶ巨大な城に着くまでを一瞬で済ませる転移魔術もすごいが、まず目に付くのはワンドの装飾である。ペルギウスは後でザノバとの会話でも分かる通り、芸術の分かる男だ。城の小物まで手を抜かないから、空中城塞の格が落ちない。

第8話からの新オープニングテーマは「光の唄」。一行が城内を進む映像へ曲を重ね、通常の映像を挟まずに未知の城へ連れていく。観光気分を保ったまま謁見へ入るためのオープニングである。
出迎えるのは、第一のしもべ・空虚のシルヴァリル。シルヴァリルが最初に尋ねるのは、「ヒトガミという名前に聞き覚えがありますか」という懐かしの問い。ヒトガミの名を聞いて怒りや殺意が湧くか、と確認する場面で、ルーデウスのトラウマ、オルステッドとの遭遇の記憶がよみがえる。

城門を抜けたシルフィの体から白い粒子のようなものが散り、シルヴァリルがルーデウスとシルフィを見比べる。二人から魔力があふれるような描写とヒトガミチェック。ルーデウス夫妻が何らかの異物であることがわかる描写になっている。

名乗りと本心
甲龍王ペルギウス・ドーラの声は小山力也さん。玉座から放つ圧と、知識を求める者にはきちんと応じる理知性が同居した、英雄としてちょうどよい重さである。
謁見で名乗る一行への反応はさまざま。アリエル様の王権争いへの思惑は見抜かれ、「魂胆が透けて見えるぞ」とつれない。ルーデウスは「貴様の魔力はラプラスを彷彿とさせる」とかつての仇敵ラプラスを思わせる魔力を警戒される。
それでもペルギウスは、ナナホシの協力者として一人ずつの望みを聞く。王様相手の謁見なのに、各人の推しポイントを持ち寄るオーディションのようでもある。

ルーデウスが尋ねるのはゼニスのこと。ペルギウスは、迷宮に取り込まれて記憶を失い、神秘の力を得る者の例を挙げ、エリナリーゼに視線を向ける。ゼニスと同じではないかもしれないが、ただ待つしかなかった問題に初めて「似た前例」が明かされる。
シルフィが名乗ると、ペルギウスにシルヴァリルが耳打ちする。ペルギウスの反応は「夫婦揃ってか」というもの。アニメ組には何のことか分かりにくい台詞だが、夫婦揃ってラプラスを思わせる魔力を持つことへの言及だろう。
さらにわかりにくいことに、嫌悪感を示しつつ「息子が生まれることがあれば、我が元につれてくるがよい。名を授けてやろう」と一見好意のような反応が出てくる。この時点では当然、原作でも意味不明で「キラキラネームでも付けるつもりなのか」と内心でツッコむにとどまる。
ザノバは自動人形のそばで見つけた紋章から、狂龍王カオスの作品へたどり着く。人形を愛するザノバの熱弁がペルギウスの趣味に刺さり、宝物殿を見せてもらえることに。王道の問いで失敗したアリエル様に対して、ザノバは好きなものを好きだと語って興を引く。

そのエリナリーゼが記憶を失った後の人生を語るBパートは、軽口だけではない彼女の過去をきちんと提示する場面になった。原作でも14巻第3話「過去と呪いと召喚と嫉妬」の核になる話であり、アニメはゼニスの問題を起点にして聞かせる構成だ。ルーデウスが「話したくない過去は責めない」と受け止めるところまで含めて、青年から成年となった今の彼だからできる会話劇になっている。

ナナホシの涙
ペルギウスは召喚魔術の大家、ということでシルヴァリルの召喚魔術講義を受けるルーデウスたち。昼食は好きなものを頼め、というわけで、ルーデウスの希望に対して供されたのが見慣れた和定食、生卵と焼き魚、白米に味噌汁という一膳だ。醤油はないが、豆の発酵食品はあるとか。そこでルーデウスとナナホシの前に出てくる、白身魚とご飯と味噌汁のなんちゃって和風定食である。
「だしもとってないじゃないの」と言いながら、ナナホシは涙を流す。味はともかく、知っている形がそこにある。出汁が無いが故郷の味だ。
ルーデウスは転生してから、この世界の家族や妻たちと故郷を作った。ナナホシだけは、まだ帰るべき故郷を丸ごと失ったまま。その差が、この昼食で強調される。

原作では、この一食に「美味しくないのに手が止まらない」理由が丁寧に書かれている。アニメはルーデウスのモノローグとナナホシの涙、という最小構成でナナホシが異世界召喚を研究に没頭する動機を伝えている。

壁画と咳
ザノバとクリフ先輩にルーデウスとナナホシも加わり、探検の先で古い壁画を見つける。何か見覚えがあり、胸糞の悪さだけが残る壁画。その正体を急いで明かさず、ペルギウスが「長居すべきではない」と案内を切り上げるのも、城がただの観光地ではないという示し方になっている。

アニメ版の壁画は、翼を持つ者や巨大な人物を黒い石の浮き彫りとして画面いっぱいに置く。細部を説明しないからこそ、意味を理解するより先に不穏さが来る。
探検を終え、休憩する一行。ナナホシが解毒を求めに応じてシルフィが解毒魔術をかけると、ナナホシが激しく咳き込む。「あれ、なんかおかしいな。魔力がなんか——」と戸惑うシルフィの前で吐血するナナホシ。急転直下で今回の空中城塞ツアーは終了だ。

次回は「慟哭」
次回は「慟哭」。ここまでで原作14巻の第1話「空中城塞」、第2話「ペルギウスとの謁見」、第3話「過去と呪いと召喚と嫉妬」と、Web版の第144〜146話を再構成している。ナナホシの病を前に、ルーデウスたちが何を選び、ペルギウスがどこまで手を貸すのか。空中城塞ツアーの観光客気分は、ここで終わりである。

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