無職転生 第21話「ターニングポイント2」ネタバレ感想 絶望しかない

無職転生の第21話「ターニングポイント2」は、様々な危機を乗り越えてきたルディたちの楽観ムードをぶち壊す。ようやく掴みかけた平和が灰燼に帰す。剣に磨きをかけたエリスでさえ手も足も出ない絶望回だ。

ネタバレ回避のあらすじは以下。

リーリャやアイシャと別れ、故郷を目指して進むルーデウスたち。 その道中で、七大列強のひとり龍神・オルステッドに出会う。 すると、エリスとルイジェルドは突然顔色を変え震え始める。初対面のはずなのにエリスとルイジェルド、さらにはパウロのことをよく知るオルステッドだが、ルーデウスのことは知らない様子。 そこでオルステッドのある質問にルーデウスが答えると、突如オルステッドが襲い掛かり―!

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ルーデウス死す

アバンは予想外の回想シーンから。地に伏したルイジェルド、微動だにしないエリス。吐血するルディの眼前には龍と同じ眼をした男、オルステッド。オルステッドの右手が動いた刹那、胸に風穴の開くルディ、といったところで毎度の特殊オープニングに突入する。

オープニングは、シーローン王国を出て、アスラ王国への向かうルディ一行。赤竜の飛び交う街道を、牛を供に徒歩で進む。牛に水魔法で水を与えたり治癒魔術で足を直したりする描写、山間地の集落でおそらく恐ろしく苦い茶を飲んでむせるエリスの描写などが、この世界の手触りを受け手に伝えてくる。赤竜を倒してみたいわねっ!とはしゃぐエリスの能天気さがいい。

魔法で補いながら牛に荷を乗せる、というリアル

アニメ版では特に説明されないが、通っているのは赤竜山脈の渓谷、「赤竜の上顎」と「赤竜の下顎」のうち、後者だ。原作ではここを馬車で通っていく。アニメ版では徒歩だ。断崖絶壁なので、蜀の桟道のような描写の方がらしくはある。もっとも雪山の中を徒歩で進むにはやや軽装過ぎる気はする。惜しい。

エリス、戦士になる

移動中もルイジェルドとエリスは剣の稽古に余念がない。エリスがルイジェルドに一矢報いることなく終わった自分にため息をついたところ、ルイジェルドはなぜかエリスに向かって「戦士と名乗っていい」と言葉をかける。

夢じゃないわよね、と喜ぶエリス。ルディにつねってみて、と顔を向けるも、ルディはエリスの頬ではなく胸、というか乳首をつまんで吹っ飛ばされる。アホかな? 平和っていいな。

ボレアスパンチ

雪の峡谷を進む一行だが、ここでもエリスは竜と戦いたいらしい。

赤竜と一戦交えたいエリスさん

龍神オルステッドとの邂逅

子雪の降る中を進んでいくと、ある時いきなり立ちすくむルイジェルドとエリス。雪煙の向こうに見えるのは、オルステッドと仮面の女だ。この時点ではまだルディたちはオルステッドを知らない。後で種明かしがあるが、この世界の人間はオルステッドに対して平静ではいられないのだ。

ルイジェルドとエリスと違い、相手を興味深げに見るルディ。お互いに黙ったまますれ違う。そのまま行くか、というところでオルステッドたちは足を止める。様子を伺おうとするルディとエリスに「絶対に動くな」と声を絞り出すルイジェルド。

緊張

ルイジェルドの声を聞き、振り返るオルステッドと仮面の女。「その声、ルイジェルド・スペルディアか?」「そっちはエリス・ボレアス・グレイラットだな」となぜかルイジェルドとエリスのことを知っているオルステッド。

貴様は何者だ、と背を向けたままオルステッドに問うルイジェルド。オルステッドは「妙なところで会ったが、まあいい」と踵を返して立ち去ろうとする。仮面の女は「いいの?」と確認するも「今の時点では仕方がない」と意味ありげな物言いだ。

ここでついにルディがたまらず「待ってください!」と呼び止めてしまう。驚愕するルイジェルドとエリス。ルディはルーデウス・グレイラットを名乗り、あなたの名前は?とオルステッドに尋ねる。ここでようやく「オルステッドだ」という名が明らかになる。

ルイジェルドとエリスとは知り合いなのかと聞くと、「まだ知り合いではない」と持って回った言い回しをするオルステッド。オルステッドはルディに興味を持ったのか、どこのグレイラット家の者か、と問う。親の名前は、という質問に、パウロと答えるルディだったが、パウロに息子はいないはず、娘が二人だけ、と不思議なことを言うオルステッドだった。

この一連のやり取りで、目をそらさないな、とルディをにらむオルステッド。それで、何の用だ、ルディに話を向けると、ルディは「あの魔力災害のこととかも何かご存じかなと思いまして」と疑問を投げかける。

何を不審に思ったか、唐突に「ヒトガミという単語に聞き覚えはあるか」とルディに聞くオルステッド。ルディが思わず「あります!たまに夢に出てきて!」と言ったとたんに、いきなり攻撃に移るオルステッド。

「ヒトガミの使徒だったか」と飛び掛かろうとするオルステッドの前に立ちふさがるルイジェルドだったが、30秒としないうちに倒される。エリスが割って入ろうとするも、指で剣を止められ、吹き飛ばされる。

ルイジェルドをあっさり倒し、エリスはワンパン

ルディはあっという間に肺をつぶされ、話せなくなっている。「龍神オルステッドは、必ずお前を殺す」とヒトガミへの伝言を残すオルステッド。エリスはファイアボールの詠唱を始めるも発動にまで至らない。

岩砲弾を放ち、オルステッドの拳を傷つけるルディ。が、そこまでだ。続いて火魔法を放とうとするも、オルステッドの「ディスタブ・マジック」という詠唱で打ち消されてしまう。原作の漢字では「乱魔」で、魔力をかき乱す、という意味だ。

乱魔(ディスタブ・マジック)

ルディは魔力そのものを集めて射出するも、オルステッドの「開け前龍門」の声で生じたシールドのようなものに阻まれてしまう。凄まじい魔力量、まるでラプラス並みだな、とルディの魔法を評価するオルステッド。ラプラスは七大列強の一人、序列4位の魔神ラプラスのことである。

ルディの極大魔力を前龍門シールドで防御

止めに、オルステッドは「なぜ肺を治療しない?」と言いながら抜き手でルディの心臓を貫く。ルディは治癒魔法を無詠唱で使えないからね。

エリスは致命傷を負ったルディに傍に這いながら近づいていく。誰でもいいから助けて、ルーデウスが死んじゃう、と。

必死のエリスを見やって立ち去ろうとするオルステッドとナナホシ

オルステッドはいくぞナナホシ、とその場を去ろうとする。ここで仮面の女からナナホシさんに格上げである。

「ねえオルステッド、一つ気になったんだけど、こいつ…」

というナナホシの言葉でAパートは終わり。

ナナホシの正体

ナナホシはこの後、2期で出てくるはずの重要人物だ。実は2話の時点で登場済みの人物だ。

冒頭でトラックに…

ナナホシ、という名前が出たにも関わらず、エンディングロールでは「仮面の女(CV:???)」である。

名前、呼ばれてましたよね?

これは2話のエンディングロールで出ている「七星静香(CV:若山詩音)」と同一人物だ。

冒頭のちょい役なのに、主演級の扱いなのがお分かりだろうか

ナナホシは、前世の男がトラック事故から助けた七星静香の転生者である。転移者、といった方が正確かもしれない。

ルディは転生なのでこの世界の人族として成長していく。ところがナナホシは、七星静香の転移時のままで年を取らない。なのでルディからすると、転生前に助けた女子高生とは結びつくはずがない。再登場時、2期の途中で明かされるのでアニメ組はもうちょい待とう。

原作ではこの世界に唐揚げを持ち込んだ「ナナホシ焼き」という言葉で米どころシーローン王国周りのエピソードでも出てくる。ルディはナナホシ焼きを前世の唐揚げと比較してダメ出ししまくった過去があるので、ナナホシ?どこかで聞いたような…、という感想になる。

なおナナホシの声優の若山詩音さんは、劇場アニメ「空の青さを知る人よ」で主演を張った実力派だ。定評は知らないが、映画を見た限りでは好演だった。感情を乗せる必要があるシーンが割と出てくる役どころなので、とてもよい。

割と重要なナナホシのネタバレ

今回のタイトルは「ターニングポイント2」である。ではターニングポイント1はというと、第8話の「ターニングポイント1」だ。ここから本当の本当にネタバレ全開なので、アニメ初見組は我慢するか原作を読み終わってからにしてほしい。

魔力災害、フィットア領消失

ターニングポイント1と2の、ルディを除いた共通点。それはナナホシの関与だ。

ターニングポイント1での魔力災害は、ナナホシが転移したことによる莫大な魔力の消費が原因だ。このナナホシを転移させた存在は、無職転生という物語の最後に登場する、とある神子である。もっと言えばナナホシ転移は後の別人物の転移のための礎であり、目的そのものではない。ルディはこの転移のための魔力を準備する段階で生じたひずみによって、前世の男からの転生先となった。

つまり脚本として一歩引いてみると、ターニングポイント1でルディはナナホシによって魔大陸に転移する羽目になり、ターニングポイント2で運命力によって歴史から排除されそうなところをナナホシによって助けられる構図だ。

ルディがオルステッドに殺されかけたように、この世界にとってルディは異物である。しかも無職転生の世界は、オルステッドを起点に200年単位でループしているのだ。今回も「必ず殺す」と宣言していたように、ヒトガミを殺すための秘術だ。ヒトガミを殺せる歴史を引き当てるために、200年を何度も何度もやり直している。

ルディが登場したのは無職転生で描かれている今、この時だけだ。なのでオルステッドは、ルイジェルドとエリスは見知っていてもルディのことは知らなかった。無職転生においてルディとナナホシが生じた時間軸(あえて世界線とは言わない)は、オルステッドの最後のループである。最後と決めたのはオルステッドだ。

やり直せるオルステッドがルディの本気によってやり直さなかった。無職転生のクライマックスである。そこもこのアニメなら説得力をもって描いてくるだろう。最終シーズンのはずなのでたぶん8~10年後くらいになるけど。長い。

ルディとナナホシは、今後(アニメでは3期以降)は同郷のよしみで親交を深めていく。いろいろあったが、どちらかが一方的な被害者ではないからだ。このナナホシとルディの等価交換が生じているのが無職転生を真剣に語るに足る作品足らしめている。

「ヒックとドラゴン」もそうだが、めでたしめでたし、ではなく、何らかの代償が無ければ物語は神話になれないというわけだ。

今回の元凶、ヒトガミさんパート

目を覚ますと、胸に穴の開いた状態でヒトガミとこんにちは、なルディ。オルステッドがルディにいきなり襲い掛かってきた理由をヒトガミに聞くと、悪い龍神なのだと言い逃れようとする。事前に言ってくれればいいのに、というルディに、龍神のことは未来も現在も見えない、と答えるヒトガミ。

というのも、龍神は呪いがかかっている「呪い子(のろいこ)」だという。本気を出せない呪い、人に恐怖される呪いなど、ほかに三つほどあるとのこと。なお本気を出せない理由は魔力の回復量が1000分の1くらいしかないから。この世界ではすべてが魔力だ。魔術師はもちろん、剣士も魔力で闘気を身にまとって戦うので強い。ルディは転生者のせいか闘気ゼロである。

ただ転生も悪いことばかりではない。ヒトガミは、オルステッドの恐怖の呪いを受けなかったルディは転生人なので呪いの影響を受けなかったのだろう、と種明かしをする。

ルイジェルドの呪いは槍の呪いで、髪を切ったおかげでもはや呪いは消えつつあるらしい。スペルド族の名誉挽回の努力は無駄じゃなかった、と安堵する前世の男である。

オルステッドは呪いのせいで本気は出せないが、本気を出すと七大列強2位だが1位の技神も倒せるらしい。

今回は運が悪かった、と淡々と振り返る前世の男。君、死んでないよ、という言葉を残してお告げを終えるヒトガミである。

安堵の涙を流すエリス

いつの間にか胸に開いた穴はふさがっている――と前世の男の夢状態から覚めたルディ。膝枕をしてくれているエリスによると、オルステッドが治癒魔術で直してくれたらしい。無職転生の世界では王級や聖級の治癒魔術だと四肢欠損も直る。

エリスに抱き着くルディ

思わずエリスの腰を抱きしめるルディ。これは安堵とエリスへの感謝と性欲がないまぜになったゆえの行動だ。原作では「エリスはさすがだった」とさすエリ回想があるのだが、アニメ版ではそこは薄めているように見える。挫けはしなかったが手も足も出なかったからね。

この後のエリスの行動を考えるとアニメ版の方がエリスにとって自然だが、エリスが起こす行動をルディが知ったときの衝撃は薄れるようにも思う。おそらく今期ラストはエリスの物語にするために、エリスの行動がより妥当に視聴者に映るように演出したのだろう。改変ではなく視点の違いだ。

抱き着いてくるルディに、叩いても大丈夫なの、と静かに声をかけるエリス。

元気そうね

ルディが殴られるかと身構えていると、エリスは軽くルディの頭を小突き、涙をあふれさせる。

安堵の号泣

「本当に…よかった…」と泣きじゃくるエリスのセリフで今回はエンディング。

全員生存

アニメ組はよかった…と思っただろうか。さすがに主人公なので死なないとは思うだろうが、助けたのがオルステッドなのは意味不明で衝撃を受けただろうか。原作の記憶を消して観てみたい回である。

抑制のきいた原作改変

振り返れば一瞬で終わったターニングポイント2。原作組の一人として「おや」と思ったことを書いておく。

まず、「魔術師は肺を潰すに限る」というセリフをオルステッドに言わせなかったのがポイント高い。本来、オルステッドはあまりベラベラとしゃべるタイプではないので、名台詞ではあるが実況風で蛇足ともとれる。アニメは本当なら戦闘中は無言にしたかったのではないだろうか。

ナナホシの最後のセリフをカットしたのも良かった。原作では「こいつ、生かしておいたほうがいいんじゃないかしら」と言い、ルディは薄れゆく意識の中でそれを聞いている。アニメ版では「こいつ…」で終わりだ。死んだわー、と思ってルディがヒトガミに相対するシーンとやや矛盾するので、これはアニメ版の方がシャープな演出だろう。

残念だったのは、オルステッドがルイジェルドに「子供好きの貴様は、例の転移によって魔大陸に飛ばされたこの二人を、ここまで送り届けたということだな」という言葉をかけるくだりが無いこと。このため、ルディがいきなり「あの魔力災害」とオルステッドに問い始める理由が弱くなってしまっている。魔力災害のことを聞く相手だとルディが認識する場面が無いからだ。

次回は「現実(ユメ)」

次回のタイトルは「現実(ユメ)」。あと2回で2期も終了だ。分割2クールにしては間が空きすぎているので2期でいいかな。

おそらく次回でフィットア領に着き、別れが一つある。2期最終回は、エリスの物語だろう。3期にエリスの出番はおそらく無い。商業的な理由で最後にインターミッションがあるかもしれないが…

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