俺ガイル完 第10話「颯爽と、平塚静は前を歩く。」ネタバレ感想

ため息と決意と

俺ガイル完 第10話は、雪ノ下との関わり方の変容を八幡のため息の変化でまとめてみせた、次回からの急展開へのエネルギーを溜める慎重な中継ぎ回だった。細かく見れば見るほど、しっかりとした構造が浮かび上がってくる。そうしないと、八幡の行動に説得力を持たせるのは難しい…

ネタバレ回避のあらすじは以下。

脚本:大知慶一郎 / 絵コンテ:大原 実 / 演出:佐々木達也 / 作画監督:谷川亮介、林 信秀、LYU、立田眞一、北村友幸、清水直樹

卒業式が終わりプロムの準備を始める八幡たち。
勝負が終わり意義をなくした奉仕部の代わりに
いろはは八幡たちを生徒会に入るように勧める。
「言い訳、わたしがあげてもいいですよ?」
それぞれの思いを胸にプロムが幕を開ける。

https://www.tbs.co.jp/anime/oregairu/story/

分かりやすく気まずい二人

プロム当日。体育館での準備で、音響周りの補佐を一色に振られる八幡。雪ノ下はそっと目を逸らす。

気まずい

これは原作では、逆に仕事の確認をテキパキ進める八幡を見る雪ノ下、という状況下で、八幡が「どこか遠くを見つめているように思えて」視線を逸らしてしまうのだ。

CM明け、準備を進める雪ノ下と八幡のシーンでは、雪ノ下は八幡から視線を逸らしたままだ。いろはすの話になって微笑みこそすれ。

諦観の微笑み

そしてすっと目を見た瞬間、こう言うのだ。

「それに、頼られたら、あなたはきっと助けるわ」
「どうだろうな。時と場合による」

あれ、こんなやり取りあったっけ?

原作にかなり忠実にセリフを回してくる俺ガイル完だが、このセリフの意図は何か。おそらく、14巻で割とページを割いている、雪ノ下と由比ヶ浜のガールズトークの総括なのだろう。お互いに八幡への想いを確かめるかのようなやり取りが、このセリフの背景にあるのではと感じた。

一色いろはは最強の後輩である(何度目だ)

その後のいろはすとのPA卓前の会話は、じっくり尺を割いてきた。ここで、いろはすが実は全員のお願いをかなえる大天使足る人材であることが改めてよく分かる。

奉仕部の廃部中止を要求する
本物

八幡と由比ヶ浜の最後

プロムが始まり、プレプロムの時と同様に八幡は由比ヶ浜のお願いを聞く形で踊る。八幡は由比ヶ浜のお願いをかなえていき、そのお願いは雪ノ下のお願いでもある。

踊ってくださいますか…? つらい

八幡の肩に顔を寄せ、「次で最後にするね」と静かに言う由比ヶ浜。つらいぞ…

八幡のため息

プロムの終盤、締めの曲出しをめぐる八幡と雪ノ下のインカム越しのやり取り。原作ではフェーダーを下げる仕草で終わるパートなので、アニメでもそう演出するかな、と思っていた。が、ここは「これで終わりにしましょう」の雪ノ下の言葉に、インカムが切られた後に椅子にもたれて小さくため息をつく八幡でAパートを終える。

これはアニメではなく演技に重点を置いた演出だと受け取った。

雪ノ下の激情

Bパートは、陽乃さんとははのんの挨拶から。この場で雪ノ下は、政治家である父の仕事に興味があると母親に伝える。ささやかな打ち上げの場、という舞台設定なので、アニメでは運動部の下っ端であるところの戸部もいるし、その他の生徒も大勢いる。その映像が生む空気の重さが痛い。

アニメ版の見どころの一つが陽乃さんの表情と声色である。陽乃さんは八幡による描写では何を考えているのかわからない感がすごい。アニメでは絵と声の演出で何らかの感情を見出すことができ、ちょっとだけ安心できる。

原作では、明らかな敵意を前に、雪ノ下は由比ヶ浜の手を思わず握ってしまう。アニメでは、八幡を真ん中に置いたレイアウトで、雪ノ下と由比ヶ浜は離れている。八幡と目を合わせるのも避けるような雪ノ下が、やはり気まずさのある由比ヶ浜の手を思わず握ってしまう人物として描かれると、それは陽乃への恐怖の強調として映る。それを避けたのかもしれない。

雪ノ下と由比ヶ浜が奉仕部の終わりについて話し、同意を求められた八幡が一色の乱入によって席を立ったシーン。廊下を行く八幡の袖を雪ノ下がつかんで引き留める場面は出色だった。雪ノ下の未練を明確に描く。

雪ノ下がもう一度、「だから…」由比ヶ浜さんのお願いをかなえてあげて、という言葉を出す前に、「ああ、分かってる、大丈夫だ」とその場を去ろうとする八幡。袖を離さない雪ノ下の指を、八幡がそっと触れながら解いていく。この後、八幡は振り返らない。原作では雪ノ下の様子は描かれないが、アニメでは八幡の想いを確かめるかのように、さっき触れた手をもう片方の手でそっと抱きしめる。

なるほど。滅多に感情を表に出さない雪ノ下の行動の重みを増すには、先に由比ヶ浜の手を握ってはいけなかった。

陽乃の素顔

そして八幡を待ち、納得しない気持ちを打ち明ける陽乃のシーン。ここは、これまで本心を見せず一線を引いてきた陽乃が、八幡にとって「幼く見えた」ほど自分をさらけだした場面だ。「本物なんて、あるのかな…」という言葉は、あってほしいという願いのように聞こえた。皮肉に受け取れる余地はない、作画と演技だった。

仮面
素顔

ため息もう一つ

Bパートは実質終わりで、スタッフロールが流れながらのCパート。陽乃を見送った八幡を平塚先生が見つけ、バッティングセンターへと拉致。「共依存なんて簡単な言葉でくくるなよ」「言葉一つで済むようなものか?」といった平塚先生の言葉に、八幡がプロム打ち上げの後、終わらせることへの同意に対して言葉をつむげなかったシーンがフラッシュバックする。言葉一つで済ませられなかったから、言葉にできなかった。

最後に、八幡の口元のアップになり、口を開きかけたところでタイトルバックが入り、ため息のような声を最後に10話は終わる。これは雪ノ下とのインカムでのやり取りで聞かせたため息ではなく、決意のため息だ。ここの表現は繊細で、感性を研ぎ澄まして味わうに足るエンディングだと思う。

次回は何かを決意した八幡が何かしてどうにかなる回だ。たぶんいろはすがまたしてもかわいい。そしてつらい。でも前につらかったシーンとかぶるから、カットかな。つらいからカットでいいよあのシーン。

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