俺ガイル完 第9話「きっと、その香りをかぐたびに、思い出す季節がある。」ネタバレ感想

これぞ映像化、と言える神演出を堪能したい

俺ガイル完 第9話は、小町をダシに由比ヶ浜の願い事をかなえる八幡と、その欺瞞にくぎを刺すあーしさんを、きめ細かなカット割りで繊細に見せていく神回だった。いつも神回言ってるけど、今回は主神。ゼウス級である。

ネタバレ回避のあらすじは以下。

脚本:大知慶一郎 / 絵コンテ:田中貴大 / 演出:佃 泰佑 / 作画監督:桐谷美咲、坂本俊太

奉仕部の勝負に勝った雪乃からの願い。
それは結衣の願いを叶えて欲しいとのことだった。
結衣を誘い公園に向かう八幡は意を決して質問する。
「お前の願いを叶えさせてくれ」
そして、結衣は自分の願いを伝える。
本当の気持ちは隠して…

https://www.tbs.co.jp/anime/oregairu/story/index.html

本音を言える世界の妹、小町

第9話のアバンは世界の妹、小町と八幡のお茶シーンから。小町が何となく「なんかあった?」と聞くと「ああ」と素直に応じる八幡であった。

前は文化祭の件をはぐらかして喧嘩になったが、今回は素直な八幡である。基本、彼が素直になれるのは小町と平塚先生に対してだけなのだ。

特に小町に対しては、実は本音でしか接しない。原作でも、八幡の言葉は気持ちと裏腹なことが多いが、小町にかけるそれは例外だ。それだけに、言葉少なになる。

演出で先を急ぐが欠けるもの無し

ここまでで驚くのは、やけに作画のクオリティが高いこと。というか、レイアウトが良すぎる。絵コンテと演出の両氏の組み合わせは初のようだが、これは今後も期待できる。俺ガイル完ではワンポイントかもしれないが、スタッフで追う時は注視していきたい。

例えば、教室で八幡が由比ヶ浜をメールで呼び出す冒頭のシーン。遠くから聞こえる戸部の雑談をBGMに、クラスメートが立ち上がるカットで始まる。

ホームルームが終わった感が一瞬で分かる
その後ろに八幡。ぼっち感がよい

由比ヶ浜が八幡の元に行く時のあーしさんこと三浦の表情も良い。

ヒキオ絶許

由比ヶ浜のお願いを聞く八幡

八幡が由比ヶ浜を誘ったのは、雪ノ下から受けた「由比ヶ浜さんのお願いをかなえてあげて」という依頼のためだ。願い事を教えてくれと頼むのは、学校近くの公園である。

はいこのレイアウト。優勝です

もはやおなじみの缶コーヒーを握るシーン、原作ではアルミ缶が変形してしまい、歪んでいく三人の関係を示唆する下りがある。

アニメでは普通にスチール缶のブラックコーヒーになっていた。なので頑丈だ。アルミ缶のコーヒーは通常ボトル型なので、八幡が由比ヶ浜に渡したホットの紅茶と形がかぶるからかな。映像は対比が重要なので、まともな作品ほど同じ形状のものを持たせない。持たせるときは意味がある脚本の人そこまで考えてないと思うよ

Aパートは、由比ヶ浜の「ちゃんと聞かせて。ヒッキーがどうしたいか」の止め絵で終わり。

原作では、八幡から由比ヶ浜を見やった状態の説明として「逆光で霞む視界の中」という一文があった。アニメではそこまで逆光を強調せず、くっきりと泣き出しそうな、諦観のような、慈愛のような、複雑な表情を見て取れる描写となっている。

原作の八幡は由比ヶ浜の表情を「綺麗に微笑んだように見えた」とするが、単なる願望だったのではないか。そこが八幡の強さであり弱さでもある。きっと本心では、その複雑な表情をすべて読み取っていたはずなのだから。

三浦優美子は優しく美しい

Bパートは、三浦が由比ヶ浜を思いやって「半端なことしないでくんない?」と静かに啖呵を切るシーンで開始。

原作では、当て馬プロムの打ち上げ会場となったカラオケボックスにおけるドリンクコーナーが舞台となる。アニメでは、シンプルに下駄箱前でのやり取りになっている。自然な改変で、むしろこっちの方がらしい気もする。

なにしろアニメでは、当て馬プロムに至る道筋が最短距離で描画されている。打ち上げをするほどの想いと行動の積み重ねを観る側が感じるほどボリュームは無い。

もっとも八幡が結衣・三浦・姫菜+材木座・遊戯部の二人・戸塚に御礼を言うシーンが無いのが残念ではある。

あのどんでん返しまであと1話でたどり着くために、断腸の思いでカラオケ打ち上げをカット

話を戻すと、この下駄箱シーンの演出もすさまじい。八幡に抑制のきいた声をかけるところで下駄箱にかける指にクッと力が入る。学校なので、その激情は声に出せない。

結衣は負けないわ。私が守るもの

原作では、八幡は由比ヶ浜を守ろうとする三浦の行動を受けて「いい人だなぁ」と独り言つ。これは三浦に聞こえて「はぁ?なにそれ。きも」と言われてしまう。後ろ姿でかすかに見えるほんのり赤くなった頬を「照れ」だと八幡は原作で解釈するのだが、案外本気で怒っていたのではないか。

アニメ版では、八幡の独り言が三浦に聞こえたそぶりはなかった。聞こえたら完全に激怒モードに入るのが自然なので、あえて避けたのか。そう感じさせる演出だ。だって友達に半端にちょっかいだされてる相手に「いい人」言われたら、完全にキモいだろう。

アニメで精彩を放った由比ヶ浜とのお菓子作り

そして廊下での八幡と由比ヶ浜、雪ノ下と一色の雑談シーンを挟んで、由比ヶ浜邸での小町へのプレゼントお菓子作りのシーケンスに移る。

原作では注意して読まないと唐突感がある話運びなのだが、この9話では小町との雑談→由比ヶ浜のお願いを聞く、というAパートを受けてのイベントだ。小町の誕生日プレゼントという免罪符を意識させつつ、うまく流れるように構成されているので自然に話に入っていける。

スーパーでこんな子と買い物とかなんなん
こんな表情させるとかなんなん

ここは由比ヶ浜結衣の晴れ舞台で、最強に強まった可愛さが炸裂する。

八幡は、一歩引いてみれば三浦が怒りをあらわにしたように、かなり半端なことをしている。だがその半端は由比ヶ浜の願いであり、その願いがかなっている間の表情たるや幸せそのものだ。

日常の終わりをほのめかす、青空からの雪模様

一気に卒業式。めぐり先輩、伝説の答辞でエンディングに突入する。泣く八幡と三浦、うるさい戸部、はじけるめぐり先輩。テンポよく、綺麗だ。

最後、青空へのパンで終わると、エンディングの雪がカットインする。これ、不安になるしかない。

これが
こう

きっと特殊エンディングなんだろうな、なんなら全部の回でそう来るだろうな、と思っていたらそうだった。

生徒会室での一幕。めぐり先輩と雪ノ下がいて、先に雪ノ下が仕事のために出ていくシーンはカット。3年生は実務から離れているのが普通なので、雪ノ下がいないのは普通と言えば普通だ。

「プロムでたくさん話そうね!」とめぐり先輩が去り際に言うように、次回はプロムで始まる。タイトルが「颯爽と、平塚静は前を歩く。」なのだが、14巻でガハマファンの怒りを買いまくったであろうあのシーンで終わる気がする。

あー、つらい。次回はつらいぞ。だいたいつらいので、感想書くの遅れがち。

エンドカードはお菓子の隠し味を耳打ちするガハママのシーン。つらい

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