俺ガイル完 第2話「今日まで、 その鍵には一度も触れたことがない。」ネタバレ感想

最近はSAOアリシゼーションの感想しか書いていない。なぜなら今期は鬱展開作品祭りだから。その一つが俺ガイル完である。

張り詰めた空気を、ごまかしながら

俺ガイルは、三角関係の話だ。三角関係は大抵、解消されて終わる。原作が完結済みの作品である以上、その結末は決まっている。ノベルゲーではないため、Ifは無い。今回は、フラグが立ち始める回、既に立っていたことに気づかされる回だ。

この辺りで、ネタバレ回避用に2話のあらすじを。

今日まで、
その鍵には一度も触れたことがない。

脚本:大知慶一郎 / 絵コンテ:清水 聡 / 演出:山中祥平 / 作画監督:アルベルト·キエ 安本 学 平田賢一 富永一仁

雪乃の願いをかなえるため、陽乃に会いにいく3人。
将来の希望を母に伝えたいという雪乃に陽乃は協力をするという。
陽乃の態度に違和感を覚え、後を追う八幡に陽乃は
「予言してあげる。君は、酔えない」というのだった…。

https://www.tbs.co.jp/anime/oregairu/story/

何このあらすじ。ネタバレがひどい。繊細な作品なのにどういうことだ。

原作の“距離感”を残す、巧みな脚本と演出

なぜあのあらすじがひどいのか。

アニメの演出では、Aパートの途中、陽乃さんがヒッキーこと比企谷八幡に「君は、酔えない」とささやく部分は無音になっている。Aパート終了時に、八幡が葉山と言葉を交わす中での回想として、「君は、酔えない」と音声化されるのだ。

原作ではできないその表現に感じ入っていたのに、あらすじ見たらはっきり書いてあるし。なので今後、アニメ組はあらすじを読むのは止めよう。

話が逸れた。さて、あらすじは残念だが、俺ガイルの脚本は原作の繊細さを巧みに映像化してくれるので見る方も慎重になる。すぐに壊れそうなものを、壊したり壊さなかったりして進む原作の危うさが、端々に跡を残す。

例えば、1話と2話は、原作では並びが異なる。アニメ版2話冒頭の八幡と葉山との会話は、原作では陽乃さんのシーンの後。陽乃さんと八幡のシーンを2話に送ることで、1話は3きょうだいの物語として、綺麗にまとまっている。

八幡と小町、川なんとかさんと大志・京華、そして雪乃さんと陽乃さん。原作より、テーマがはっきりした感すらある。

八幡と陽乃さんの夜の散歩シーンの描き方も良い。

原作では、八幡は「一歩先を行く」陽乃さんにやや遅れてついていく。雪乃の選択は合っていても間違っていてもどちらでもいい、と言い放つ陽乃さんの表情を八幡が窺おうとしても、その顔は見えない。見せない、と言うべきか。

これがアニメでは、八幡は陽乃さんと横に並んで歩く。八幡と陽乃さんの距離感は最初から近い。では表情を窺えない、という機微をどうするのかというと、車のヘッドライトで見えない、というように描く。

中身を見ようとしても、見えない。その表現を夜間のライトで。良い。

絵になる場面にするだけでなく、原作が気を遣っている距離感の緩急を残す。これはとても繊細で、意外とお目にかかれない演出だ。

陽乃さんは、話したいこととして「これからの私たちについて」と雪乃に言われ、雪乃と由比ヶ浜、そして八幡との関係かと勘違いをする。しかし雪乃は、「私と姉さん、それと母さんの話」と静かに切り出す。陽乃さんは、「ああそっちか。わたしが聞きたい話じゃなさそうだ」と興味を失った顔をしつつ、由比ヶ浜に「ね?」と同意を求める。もちろん、由比ヶ浜も、「もっとおぞましい何か」とこの関係を表していた八幡も、頭に浮かんだのは「共依存」な「私たち」についてだっただろう。

しかし雪乃は、そして「少しはマシになった」と、冷たいながらも刮目したような表情を見せる。陽乃さんは、選択の結果には興味が無い。その選択に雪乃がいるのか。依存ではない意思があるのか。意思の存在を確認した陽乃さんは、同志として雪乃の応援に回るのだ。相変わらず素直ではないが。

八幡とのシーンで、八幡に「お姉ちゃんしてやったらどうですか?」と問われた陽乃さんは「いやよ」と即答し、「君はいつもお兄ちゃんしてるけど」と返すと、八幡にもたれかかる。酔えない、という陽乃さんがこうするのは、弱さか強さか。また姉、兄という関係の中の同志として、八幡を認めた瞬間ではあるだろう。そのきょうだい観は、自由に生きる、生きようとする妹、弟を、自らを自覚的に、無自覚に犠牲にして見守るという、やや屈折したものではあるが。

俺ガイルの通奏低音で本心の不在というものがあると思っているが、陽乃さんはその象徴でもある。きょうだいを中心に回る1話と2話に、由比ヶ浜の居場所はない。写真の中に、由比ヶ浜はいなかった。

エンドカードがつらい

SAOのように毎回感想を書くかどうか分からないが、筆を執らせる俺ガイル完。原作の完成度が高いので、意図をくみ取って絵にするだけで、あたかも頭外定位するヘッドフォンのような、予想を超える広がりを見せてくれる。

だが辛いぞこの先は… エンドカードの主役は由比ヶ浜といろはす。二人に幸あれ。

このエンドカードも既につらい…

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