無職転生Ⅲ 第14話「覚悟」ネタバレ感想 追伸

 無職転生Ⅲ第14話「覚悟」は、老ルーデウスの日記を読み終えたルーデウスが、家族を守るために覚悟を決める。アニメ版では、その覚悟をエリスへの手紙に象徴させ、それを受ける側のエリスの疾駆で3期第1クールの締めくくりとした。またしばらく待つことになるが、2クール目への期待がますます高まる脚本・演出となった神回だ。

ネタバレ回避のあらすじは以下。

老ルーデウスの日記を読み終えたルーデウスは、愛する家族を守るために、悲惨な未来を回避するために行動を開始する。シルフィエットとロキシーに老ルーデウスの存在や詳細を隠しながら、家族に危険が及ぶかもしれないということを伝える。そして「エリス」の存在についても…。

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 14話のアバンは、雪のちらつくシャリーアの朝から始まる。老ルーデウスの日記を読み終えたルーデウスは洗面台で嘔吐し、物音に気づいたシルフィが起きてくる。前々回、ルーデウスが二人の寝室の扉を封じた氷の魔術は、もう溶けかけている。あの夜から時間が流れたことを、台詞なしで見せる細かい表現だ。

老ルーデウスの日記の最後のページ
読み終えた日記の最後のページ。字、キレイだよね…?

 「いつでも僕が慰めてあげるよ」と言うシルフィを前に、ルーデウスは、こんな優しいシルフィを未来の俺は裏切るのだ、と反芻する。辛い時に嫌なことを言うかもしれない、でもいなくならないでほしい。そう頼むルーデウスに、シルフィは、喧嘩になっても仲直りできるよね、と返す。原作では、この嘔吐とシルフィの場面は日記を読んでいる途中の休憩にある。アニメは読み終えた後へまとめて置いたことで、シルフィへの感情の高まりをより分かりやすく伝える流れとなっている。

 そこからOP曲「光の唄」を背景に、まだこの世界のルーデウスでは失っていない日常が流れてゆく。ゼニスの髪をとかし、リーリャとアイシャの配膳を手伝うルーデウスを、ノルンが意外そうに見る。ロキシーの脚を気遣い、ハイハイを始めたルーシーに喜ぶ。そして、ふと気づくと誰もいない食卓を幻視して戦慄する。日記に書かれた未来が、幸せな日常のすぐそばにあることを示すシーンだ。

生きている二人

 Aパートは、ルーデウスがロキシーに「最近体調に変化とかありませんか?」と尋ねるところから始まる。ロキシーにはぜひとも長生きしてほしい、と。ロキシーは、種族の寿命で考えれば私の方がルディより長生きですから、ルディの方こそ長生きしてください、と笑って返す。

 日記を読んだルーデウスにとって、この返事はまるで違う重さで響く。二人がまだ生きている。あの日記の内容は絶対に回避しなくては。ロキシー本人は何も知らないまま、自分の方が長生きすると明るく言い、それを聞くルーデウスだけが別の未来を知っている。

 ルーデウスが部屋に戻ると、残された二人は「今日のルディ、様子がおかしくない?」と顔を見合わせる。辛い時でもなかなか口には出さない人だから、深く詮索せず、いざという時に力になろう。原作ではシルフィの視点で振り返られる相談を、アニメは二人の短い会話にしている。

 一方、ルーデウスはやるべきことを三つ、振り返る。

  1. ナナホシに相談する
  2. ヒトガミを疑い、でも敵対はしない
  3. エリスに手紙を送る

 問題は3だ。複雑な感情を持つ相手だからこそ、手紙はシルフィとロキシーに相談してから出すことにする。

 夕食の席も、家族の気遣いであふれている。ルーデウスの問いに対して学校生活の様子を報告するノルン。リーリャは、今日はアイシャがルーデウス様を元気づけようと張り切っていました、と添える。

 原作では、アイシャの場面は日記を読む途中の昼食で、ロキシーとノルンは不在だ。ノルンの学校生活も、夜の寝室でロキシーに「どうだね」と妙な口調で聞く形になっている。アニメは家族全員を一つの食卓に集め、ノルン本人に「学校での生活はどうだね」と聞かせた。原作の妙な口調だけは、ちゃんと残っている。様子かおかしい、と感じさせる要素の一つだからだろう。

食卓でルーデウスを見る家族
家族はみんな気づいてる

 ルーデウスは、今日の食事はやけに美味しく感じるな、と噛みしめ、この優しい家族のためにも俺がしっかりしなければ、と心に決める。けれど家族の方は、とうにルーデウスの異変に気づいて、元気づけようとしている。守る側だと思っている男が、実は守られている。この構図は、次の場面の相談にもつながっていく。

背中を守る二人

 その夜、ルーデウスはシルフィとロキシーを部屋に呼ぶ。まずはロキシーに、最近何か気になることはないかと聞く。ロキシーは、一つあるが確定してから報告したいと答える。次にシルフィに聞くと、強いて言うなら夫が何か隠し事をしていることぐらいかな、と返される。

 それを受けてルーデウスは切り出す。先日、未来を予知する神子(みこ)のような人に会った。その神子によれば、自分たち家族を狙う者がいて、最悪、死者が出る。未来の自分が日記を残して死んだことは伏せて、危機だけを伝える。原作でも「神子」という言い方で、話す情報と伏せる情報を選んでいるのだと、シルフィが地の文で察している。

 心配しすぎじゃないの、と言いながらも、シルフィは「信じるよ」と受け止める。ただ、またルディが外で危険な目に遭うのは嫌だ。そこでロキシーが、ルディが留守の間は私が家族を守ります、と言い切る。さらに、ルディが危ない目に遭うのをただ見ているつもりはない、私たちから見て危険だと思ったら、その時は助ければいい、と続ける。

燭台を挟んでシルフィ、ロキシーと向き合うルーデウス
左:まじめな話のつもりで呼んだ人 右:動きやすい恰好でそのつもりだった人×2

 ルディは後ろを振り向かず、思う存分好きなことをしてください。ロキシーのこの一言で、話はすっと前に進む。シルフィがロキシーに向ける、さすがというか感謝というか、そんな表情がいい。一人で抱え込もうとするルーデウスに、二人の妻がそれぞれの形で背中を預けさせる場面だ。

 ところが、もう一つの話で空気が変わる。もしかすると、もう一人妻が増えるかもしれない。え、ナナホシ? と聞き返すシルフィに、エリスという人で、と答えるルーデウス。シルフィはエリスの名前を聞いて怒り、「今はシルフィの方が好きです」と言われて顔を赤らめる。その表情の移り変わりが、丹念に描かれている。

 シルフィにとってエリスは、ルディが病気になった原因の人だ。あの頃のルディはずっと辛そうで、殺伐としていた。そんな思いはもうしてほしくない。ルーデウスは、だからこそエリスと向き合いたいのだと答える。エリスは自分のためにずっと修行していたらしい。それなのに拒絶したら、自分と同じ思いをさせてしまう。

 頑張ってきて拒絶される恐ろしさは、なんとなくわかる。僕もルディに追いつこうと、ブエナ村で頑張っていたから。シルフィのこの一言で、エリスは「ルディを捨てた人」から、自分と同じようにルディを想い続けてきた人に変わる。原作ではシルフィの一人称の地の文で揺れ動く気持ちを、アニメは台詞と表情に移している。

 最後は、実際に会ってから決めてはどうか、というロキシーの提案でまとまる。シルフィも以前「その時はちゃんと僕たちの前に連れてきて」と言っていた。シルフィは、会って確かめて、その後に自分の気持ちを伝える、と約束する。三人は川の字になって眠り、Aパートが終わる。

一生独りの一人

 Bパートは夢の中、ヒトガミの「ふざけた真似をしてくれるよね」から始まる。未来から来るなんて反則じゃないか、せっかくうまくいきそうだったのに。老ルーデウスの過去への転移は、ヒトガミにとっても想定外だったらしい。

 ルーデウスは、未来の自分が言った通り敵対するつもりはない、だから家族には手を出さないでほしい、と頼む。ヒトガミは、ずいぶんと殊勝じゃないか、と返す。今の自分はまだ何もされていないから、できればいい関係を築きたい。老ルーデウスの言いつけどおり、ルーデウスはまず下手に出る。

 ヒトガミは「目的は世界平和と言ったら信じるかい?」「オルステッドは世界を滅ぼそうとしている」と動機を語る。例によって嘘である。

 ヒトガミはこう説明する。オルステッドは強いが、呪いのせいで一人きりで、一人では決してヒトガミに勝てない。ところがルーデウスとその子孫には、オルステッドの呪いが効かないらしい。将来、ヒトガミはオルステッドとルーデウスの子孫に打ち倒される。だから妊娠したロキシーを狙ったのか、とルーデウスは悟る。

 オルステッド。かつてルーデウスがほとんど歯が立たないまま、一度は命を落としかけた龍神である。

無職転生 第21話「ターニングポイント2」ネタバレ感想 絶望しかない
無職転生の第21話「ターニングポイント2」は、様々な危機を乗り越えてきたルディたちの楽観ムードをぶち壊す。ようやく掴みかけた平和が灰燼に帰す。剣に磨きをかけたエリスでさえ手も足も出ない絶望回だ。

 ルーデウス本人を狙わなかったのは、運命が強すぎて思い通りにならなかったから。妻や子孫も運命が強い。だが女性には、運命の強さが曖昧になる時期がある。子供を体の中に宿している時だ。完璧だと思ったんだけどな、と悔しがるヒトガミ。ここでのヒトガミの表情は、これまでで一番よく見える。妊娠のことを話すときの愉悦の表情は、最悪としか言いようがない。

妊娠の話をするヒトガミの顔
最悪の愉悦

 家族を助けるためなら何でもする、とルーデウスが言うと、ヒトガミはすかさず「何でもするって言ったね」と拾う。

「じゃあさ」「オルステッドを殺してよ」

 目を覚ましたルーデウスは、今のは夢ではない、間違いなくヒトガミだった、と確かめる。そして、人を一人殺さなければいけなくなった、と言い残して部屋を出ていく。不安げな表情で見送るシルフィとロキシーの姿が痛々しい。

 オルステッドを殺す。あいつを殺して、俺の家族の人生を守る。たとえ刺し違えて、残った家族を悲しませてしまったとしても。そう心を決めたルーデウスは、まだ出していなかったエリスへの手紙に、一文を書き足す。何を書いたのかが明かされるのは、この回の最後だ。原作でも、夢から覚めて研究室へ向かい、出すつもりだった手紙に一文を付け加える。書き足す順番は、原作どおりだ。

羽ペンを手に手紙に向かうルーデウス
手紙に一文を書き足す

 アバンで「いなくならないで」とシルフィに頼んだルーデウスが、今度は自分がいなくなるかもしれない道を選ぶ。家族を守るための覚悟が、家族を置いていく覚悟とひとつになっている。原作にあるとおりの流れだが、アバンの約束があるぶん、アニメではこの書き足しがいっそう重く見える。

エリスへの檄文

 場面は変わって剣の聖地。シャリーアへの出立を前に、エリスは本当におかしくないかしら、と身なりを気にしている。どうせ向かう途中で乱れるわよ、と返すニナ。見送りの前のひとときに、ニナは聞きかじったルーデウスの噂を並べる。伝説の迷宮を踏破した、不死身の魔王を滅ぼした、七大列強といい勝負をした。さすがはルーデウスね、そうでなくっちゃ、とエリスはご満悦だ。

 ところが噂には続きがある。胸の小さい娘が好きらしい。大丈夫よ、とエリス。さらに女たらしで、いつも違う女をはべらせている。そしてニナのとどめの一言、あなた忘れられてるんじゃないの? 返事の代わりに飛んできたのは、エリスの拳だった。

ニナに拳を繰り出すエリス
ニナじゃなければ死んでる

 原作でも、ニナはこの拳を受け止める。受け止めたうえで、エリスの苛烈な目には耐えきれず視線を逸らす、というのが原作のニナだ。ただの噂よ、と腕を組むエリスとのやりとりは、ほぼ原作どおりに進む。

 ギレーヌが馬を連れて現れ、水神レイダとイゾルテも見送りに加わる。イゾルテはアスラ王国に戻るので、ニナを誘う。アスラ王国に来ることがあったら町を案内します。ニナは、私みたいな田舎者は笑われるだけだと断る。そこへエリスが、私たちを笑う奴なんて叩き切ればいいんだわ。あんたが言ったら洒落にならない、と笑い合う三人は、2話で合同稽古を始めた頃からすると別人のようだ。

笑い合うニナ、エリス、イゾルテ
私たちを笑う奴は叩き切ればいい、の三人
無職転生Ⅲ 第2話「吠えよ狂犬」ネタバレ感想
無職転生Ⅲの第2話「吠えよ狂犬」は、第1話「燃えよ狂犬」からの連続放送。水神流の水王であるイゾルテが登場し、あのエリスをいなしまくり。新エピソードの追加でエリスの底力と成長を感じさせ、センスだけではなれない「剣王」となる道筋を切り開いた狂犬王の誕生会だ。ネタバレ回避のあらすじは以下。ルーデウスに相応…

 そこへ手紙が届く。ルーデウスって人からの手紙が! と手紙を持ってきたのはジノだ。原作では、通りすがりの郵便配達の男が「ちわーす。郵便です」とやって来る。アニメは届け手をジノに変え、見送りの輪に剣の聖地の顔をもう一人加えた。

 習ってない字が多い、と読むのに苦戦するエリス。私は文字とか読めない、とニナ。結局、イゾルテが読み上げることになる。朗読の間、水神レイダが後ろで待っているのが少し不思議にも見えるが、原作でもレイダはイゾルテの引く馬の上で、この見送りの場に居合わせている。

 前略、エリス様。ご無沙汰しております、ルーデウス・グレイラットです。あなたとの初めての夜を覚えているでしょうか。朝目覚めた時、あなたは隣にいなかった。その時の喪失感と虚脱感が、私の心に深い闇をもたらした。ここでエリスがぼそりと挟む、書き置きは残したわ。原作の朗読には、この合いの手はない。エリスにはエリスの言い分が一応ある、というアクセントだ。

 手紙の続きはこうだ。ある人物から、エリスの心は常に自分に向いていると聞いた。以前と変わらぬ気持ちなら受け入れる準備がある。ただし今は二人の妻がいるので三番目になる。どうしても許せないなら、あなたの拳を受け入れる覚悟がある。家族になれないとしても、友人として良い関係を築きたい。原作の手紙はもっと長く、別れてからの年月や落ち込んだ三年間、拳は二、三発で勘弁してほしいといった一文まである。

 聞き終えたイゾルテは、ひどい、女を舐めているとしか思えません、と憤る。ニナは、かなり配慮した内容だと思うけど、とかばう。愛しているの一言もないんですよ!、というイゾルテに、ほったらかしにしたエリスにも責任があるのよ、と返すニナ。ニナは魔法大学でバーディ陛下を粉砕したルーデウスを見ており、エリスのいい加減さも知っているので、こういう会話になる。

 二人が言い合う間、エリスは固まったままだ。原作ではこのエリスを、空は青く、心は真っ白だった、と書いている。

手紙を聞き終えて固まるエリス
真っ白

 ところが封筒には、もう一枚入っていた。

 追伸。私はこれから、龍神オルステッドに戦いを挑みます。勝てるかどうかは分かりません。もし生きて帰ってこれたら、話の続きをしましょう。

 このくだりで、イゾルテの糸目が開くのがいい。原作の追伸には、この手紙が届いた時にはもうこの世にいないかもしれない、という一文もあるが、アニメはそこを削って短く締めた。守る気はあるが死ぬ気はない、という点でルーデウスの筆が滑った感、お茶らけた感を出す文章だが、映像では蛇足かもしれない。

 エリスの顔に笑みが戻るのは、この追伸を聞いてからだ。三番目の妻だの、拳を受け入れる覚悟だのには固まっていたエリスが、オルステッドの名前で目を覚ます。エリスが剣の聖地で目指してきたのは、称号ではなく、その先にいる龍神とルーデウスだった。剣聖と剣王の違いを問われて「覚悟よ」と答えたエリスには、手紙の本文より、命を懸けた追伸の方がまっすぐ届く。

追伸を聞いて笑みを浮かべるエリス
追伸で、笑みが戻る
無職転生Ⅲ 第6話「修羅場、再び?」ネタバレ感想 変わったね
無職転生Ⅲの第6話「修羅場、再び?」は、小説版でルーデウスの人物像を深める役割を果たした負けヒロインのサラと、家庭を築いたルーデウスが再会。タイトル通り大人になった二人に修羅場は訪れず、過去に決着をつける。第1ヒロインにして第3ヒロインのエリスを迎える地ならしをするバトン回だ。ネタバレ回避のあらすじ…

 急がないと、遅れちゃうわね。行くわよ、ギレーヌ、と走り出すエリスとギレーヌを、ニナ、イゾルテ、レイダの三人が見送る。馬で駆ける二人の姿からエンディングへと入る。3期のEDはエリスが主役で、エリスで始まり、エリスで終わる今クールの締めとして、これ以上ないつなぎになっている。

シャリーアへ駆け出すエリス
疾駆

次回は第2クールで

 今回は次回予告がなく、最後に出るのはエリスとギレーヌを描いたエンドカードだ。ご視聴ありがとうございました、第2クール目もお楽しみに。3期の第1クールはここで一区切りとなる。

エリスとギレーヌのエンドカード
第2クール目もお楽しみに

 今回は15巻の第一話「日記 前編」後半の嘔吐とシルフィの場面、第二話「日記 後編」の食事の場面を日記を読み終えた後に集め、第三話「覚悟」をほぼ丸ごと、そして第五話「手紙、届く」を使っている。

 間の第四話「ナナホシの仮説」は使われていない。ルーデウスが三つのやるべきことの最初に挙げたナナホシへの相談は、まだ描かれないままだ。2クール目は第六話「準備」で、ナナホシへの相談から始まるのだろう。

 追伸に書いた戦いも、エリスのシャリーアへの旅も、始まったところで第1クールが終わる。公式Xアカウントは2027年決定!、としているので、1年後(?)の第2クールを待つことになる。春アニメだったらいいのにね。

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