相棒16 「300回記念スペシャル」後篇 感想 威風堂々

堂々とした後編だった。派手な部分は片山雛子に任せ、人の業を淡々と描く、相棒の人気を支える根幹を大事にした回だった。 以下ネタバレ 前編の冒頭で明らかなようにフーダニットではない。常盤臣吾(演:矢野聖人)の更生と限界を丹念に見つめる構成だった。 常盤は元傭兵として殺人のスキルを身に付けた。そのスキルをヤロポロクの暗殺に発揮し、現場で社美彌子の写真に心を奪われる。その代償として他人のために殺す、愛情の一種を獲得した。兵士は戦場から戻れば変わる。ただ帰りきらない者もいる。そうした事実を並べ、理解を示す杉下右京と冠城亘、美彌子を描いて幕を閉じる。 そう、3人は動機について完全に理解している。受け入れられないが、理解はしている。亘はつかみかかり、美彌子は頬を張る。 美彌子のビンタシーンは、思い切りが悪くNGに近い違和感がある。単純に愛する者を殺めた者への感情の発露、というのはドラマとしてすっきりするが、そうは見えない。迷いを感じさせる平手打ちに留まるのは、意図的な演出だと受け取った。 最後に拘置所で更生を願う瀬戸内米蔵がその意図を確かなものにさせた。理解できない異常者では無く、復元の可能性がある人間として扱い続ける脚本と演出だった。 浮いていた片山雛子は、政治への問題提起役だった。米露のインテリジェンスと合わせて、日常に横たわる危険物をスパイスとして見せていた。外事課が出てくるとスペシャルらしくなるものの、話が発散しすぎる。 あくまで常盤臣吾という人間の存在を、嫌悪しつつも認めることが出来る、そういう人を視聴者に想定した渋い300回記念だった。長く続く番組には理由がある。

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