相棒17 第7話「うさぎとかめ」感想

相棒17の第7話「うさぎとかめ」は、三十一文字(みそひともじ)、将来への伏線ありの一話完結モノ。風刺が効きつつも明るい作風の脚本で一風変わった相棒を見せてくれた。 ネタバレ前に、あらすじは以下。

ある朝、オフィス街でリクガメを見掛けた右京(水谷豊)が、後をついていくと、公園のテントで血を流して意識を失ったホームレス男性(山中崇)を発見。彼のペットと思われるカメを保護した右京は、亘(反町隆史)とともに襲撃事件の背景を調べ始める。手掛かりは、テントにあった新聞。調べると、新聞は水曜日に発行されたものばかりで、そこには男性が『詠み人知らず』という筆名で投稿した短歌が、何度も掲載されていたことが分かる。さらに、その作風から、同じ人物がかつて、『うさぎ』という筆名を使っていたことも判明。右京たちは、ホームレス男性が、2年前に失踪した鮫島という国土交通省港湾局の官僚であることを突き止める。国交省に問い合わせると、鮫島の同期で人事課長という要職にある杉原(松田賢二)が対応。さらに、鮫島の同期で現在は総務課長を務める谷川(関幸治)からも事情を聞くが、いずれも冷淡に応じるばかり。そんな中、鮫島が意識を取り戻すが、襲われたときの記憶を失っていて……!?

事件の謎を解く鍵は“カメ”と“短歌”!? 背景には官僚が絡んだ2年前の談合疑惑が… 特命係が埋もれかけた日本の闇と対峙する!
ゲスト:山中崇 関幸治 松田賢二

官僚はウサギかカメか

脚本は相棒15の17話「ラストワーク」の印象が強い森下直氏。監督は安心の橋本一氏。カメを軸に軽妙なタッチで話を進め、ラストワークと同様に、最後に少しだけ受け手の感情を煽って終わる。

その頂上は事務次官

今回は犯人当ての要素が強め。タイトル「うさぎとかめ」のかめは一目瞭然だが、うさぎはどっち?という趣向だ。容疑者は二人で、どちらも怪しげな傷を負っている。 共犯が成立するにはあまりに狭い犯行現場で、誰が何を起こしたのか。その引っ掛かりを燃料に、カメの生態をスパイスに、徐々に弾みをつける前進力を生むのは、右京ではなく視ているこちら、という印象だ。 右京さんは亀を嬉々として育てるが、純粋な興味なのか証拠保全なのか、いまいちはっきりしない。今回の右京さんには霞がかかっている。霞ヶ関だけに(えー)。

哀しく狭い、官僚という舞台

一昔前は、キャリア官僚はスケールの大きい話に欠かせない要素だった。対抗する政財界の描き方次第で、高揚とも沈痛ともとれる感情を呼び起こさせてくれた。ところが今では、度重なる不祥事でその効果は地に落ちている。 もちろん、脚本としては、地に落ち泥に埋まって上を見るヒラメを駆逐する存在としてカメたる鮫島とウサギたる谷川が描かれる。だが政官財という舞台全体が縮小している印象が否めず、こじんまりとしてしまう。 寓話のオチ、最後にカメが勝つ、というお約束と整合しないので、どうにもすっきりしない。寓話か短歌か、どちらかに絞ればよかったのだろうか。

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