薄暮の意味
俺ガイル完 第7話は、遊戯部と玉縄で癒されるAパート、雪ノ下と由比ヶ浜、そして八幡の関係を光で演出したBパートで、脚本と演出が細やかな回だった。
ネタバレ回避のあらすじは以下。
最後まで、由比ヶ浜結衣は見守り続ける。
https://www.tbs.co.jp/anime/oregairu/story/
脚本:大知慶一郎 / 絵コンテ:及川 啓 今井翔太 / 演出:山中祥平 / 作画監督:北村友幸 林 信秀 清水直樹 五十子忍
材木座からの紹介で遊戯部の秦野、相模の協力を取り付けた八幡と結衣。
5人での打ち合わせは遅々として進まない。
「だからさ、もっとおっきなイベントにしたらいいんじゃない?」
結衣の一言でプロムの方向性が決まり、計画は動き出す…
遊戯部の日常
前回、由比ヶ浜のモノローグで終わる脚本がために次回送りとなった遊戯部のくだり。相模姉の回想シーンを3期の作画で見られた以外は順当に、王道に、会話劇が進む。
由比ヶ浜が仲間に引き入れる候補として「部長会」を挙げる部分は、遊戯部が「なんか権限あるんですか?」という突っ込みを受ける八幡の説明が無いので、ガハマさんがちょっとアホに見えるかもしれない。
原作だと、八幡は部長会を現行プロムに反感を持つ団体の候補として位置付ける。なのでかなり嫌々ながら部長会のトップである葉山に話を持っていこうとする。基本、話したくない八幡が葉山と話す価値を認めるだけのブラフ効果が、部長会にはある。なので、直感の天才ガハマさん凄い!と読者はなるのだがまあどうでもいいね!
玉縄 vs. 八幡のラップバトル
さて、原作だと雪ノ下との邂逅シーンに入る流れだが、アニメでは幕張総合高校とのラップバトルに移る。ラップバトル?
そう、原作でもラップバトル風なのだ。貧乏ゆすりと指トントンから始まるダンサーインザダーク。でも、哀しいことに既に古びてしまった。化物語シリーズが一気に駆け抜けたアニメ化でさえギリギリだった。
まあ、玉縄は前髪を息でひたすら吹き上げていて癒しでしかない。それでAパートは終わる。そう。Aパートは安らぎのパートとしてまとまっているのだ。ラップバトルもAパートならOK。遊戯部と幕張総合をまとめてAパートにしたのは最適解なのだ。
Bパートは、遊戯部との打ち合わせからやっはろー公式挨拶化計画の挫折、デジタル一眼カメラの用意、材木座発案のプロジェクト名「サイコウプロジェクト」命名、と進む。
消えない光
そして山場の雪ノ下との邂逅だ。ここは大胆な演出を加えてきたのでびっくりした。
原作では、場面設定は夜に近い。校舎の位置的に陽が入り込まないので、薄暮でも暗い。オレンジ色の街灯下に佇む雪ノ下に息をのむ八幡、という名シーンがある。
だがアニメでは、もう少し夕方寄りだ。暗闇に光る自販機、という原作の記述を意識してか、周囲の明るさの割に煌々と光っている。
雪ノ下の横顔も、柔らかな冬の夕暮れ、といった体で、夜とは言えない。
それだけに、何かが前に進んでいる、先にある何かはともかく、進む過程に喜びを得る雪ノ下の柔らかな表情が映える。
少しづつ、日は落ちていくが、暗闇は来ない。
当たり障りのない会話で去ろうとする雪ノ下を、由比ヶ浜が引き留める。手を引き、さらには抱きつくのだ。
由比ヶ浜に抱きしめられた雪ノ下は、その手で抱き返すことができない。所在無げな手は宙を泳ぐ。
その光景を見守る八幡は、どうしているのか。これは原作に言及の無い部分だ。
アニメ版では、雪ノ下にもらったマッ缶を握りしめている。少しだけ力が入る姿が八幡らしい。地の文はともかく、決してクールではないのだ。
そして最後まで、夕闇が訪れることは無い。薄暮のまま、三人が不器用に心を重ねあって終わる。あたかも、プロムの決着という夜が来ないまま、今のあいまいな状態のまま、すべてが続いてほしいという、由比ヶ浜の想いの表われのようだ。
暗闇の中、三人を照らすオレンジ色の街灯。それはそれで、美しかっただろう。ただ映像表現として、その選択肢ではなく、むしろぼんやりとしがちな薄暮を描いた。ハッピーエンドであってほしいという、見る側の希望に応えた演出だと思う。
本当の光は、もっと暗かったのかもしれない。
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