全シーンほぼ神なのですにぱー
無職転生の第15話「ドルディア村のスローライフ」は、原作の構成を大胆に組み替え、ルディとエリスの成長を描き切った神回だ。エピソードを削ることなく、理想の構成とした脚本に賛辞を贈りたい。脚本に応えるかのように1カットずつ丁寧に心理や場面を描写する作画も本作最高レベルだ。
ネタバレ回避のあらすじは以下。
ドルディア族の集落に迎え入れられたルーデウス、エリス、ルイジェルド。 この村がギレーヌの故郷だと知ったエリスは喜ぶが、ギレーヌの兄・ギュエスは彼女のことを一族の面汚しだと吐き捨て、二人は一触即発の事態に。 タダならぬ様子にルーデウスたちが困惑する中、エリスはギュエスの娘であるミニトーナに剣術を教えることになって……。
https://mushokutensei.jp/story/15/
雨に沈むドルディア村をしっとりと描く
アバンはエリス、獣人族の子供であるミニトーナ・デドルディア(猫耳、以下トーナ)、テルセナ・アドルディア(犬耳)の3人が橋が水没するほどの巨大水たまりで水浴びしているシーンから。
ついに来たか温泉回、と思いきや雨季なので水浴びである。ルディはその様子をのぞき穴を空けた木箱に隠れて覗いている。そこにギュエスが聖獣様とともに現れ、娘に手を出すというのなら、と剣の柄に手をかけたところで五体投地で謝るルディだった。
毎度のことながら特殊オープニング。長雨で木の上の住居以外は水没している街の様子、剣の腕をトーナとテルセナに見せるエリス、魔物を警戒するルイジェルドら戦士団、ルイジェルドのフィギュアを試作中のルディ、北聖ガルスとともに投獄されたままのギース、族長宅での食事シーンと続いて終わる。
このアバンの雨に沈む街の描写がとてもよい。前回までは特に触れられていなかった、住居が高床式なのはこのせいか、と見てすぐ分かる。
「人は変わるんです」
CM明け、食事シーンの続きで、聖獣様と戯れるルディ、獣人族の子供たちに人間語を教えるエリス。トーナの親であるギュエスは、エリスに礼を言う。
その際、エリスの指輪が目に留まる。10歳の誕生日にギレーヌからもらったの、と無邪気に答えるエリスだったが、ギュエス、さらにはギュスターヴまで顔色が変わり、空気が一変する。
ギュエスは、あいつはまだ生きているのか、どこかで野垂れ死んでいると思っていたのに、と吐き捨てる。大森林と聖獣様を守るというドルディア族の使命を捨てた一族の面汚し、とまで断罪し、トーナを連れて族長宅を去る。
一瞬あっけにとられたエリスだったが、出て行ったギュエスを追いかけ、「何なのよあんたっ!!ギレーヌは私の師匠よ!」と絶叫する。
こぶしを握り締めながら、とても強く、助けてくれる存在で、尊敬しているのだと、泣きながらくやしさを伝えるエリス。
エリスが発した「尊敬」という言葉にたじろぐギュエス。様子を見ていたルディはエリスを、自分たちが知っているギレーヌと、ギュエスの人たちの知るギレーヌは違う、と慰める。
一夜明け、指輪を眺めながらギレーヌとの思い出に浸るエリスの許に、トーナとテルセナがやってくる。
ギレーヌのことを知りたい、というトーナによると、ギレーヌはギュスターヴの妹なのだと。ギレーヌのようになるなと言われていると。剣の鍛錬で心を鍛えるよう言われているが、トーナは剣が嫌いなのだと。
トーナは私と同じね、と語りかけるエリスは、自分は勉強が嫌いなのだと笑う。
トーナはエリスの剣に目をやり、ギレーヌおばさんの剣を知りたい、と頼む。ギレーヌの強さが分かるまでみっちり叩き込むから、と快諾するエリスである。その様子を陰で聞いているギュエス。
エリスがトーナに稽古をつけているさまを眺めるルディの横に、ギュエスがやってくる。剣の修業を嫌がっていたのに、といぶかるギュエスだ。
ギレーヌが剣王であり、魔術についてはルディの弟子だというと、ルーデウス殿も冗談がうまい、とギュエスは笑う。冗談とは言わないルディに、冗談でしょ?と自信なさげに聞くギュエスに、ルディは算術や読み書きもできるようになった、と返す。あのギレーヌが…?と考え込むギュエスに、「人は、変わるんです」と優しく話すルディだった。
原作も変わるんです
ここでAパートが終了する。15話のAパートは、自分が転生によって生まれ変わったルディのまなざしをよく描写できているシーンだと思う。
原作では、ギレーヌのエピソードはルディののぞき未遂の前に出てくる。ギレーヌを見直すシーケンスは文章としてはバラバラだ。
そののぞき未遂シーンも、原作ではエリスがトーナとテルセナに人間語を教えている最中に着替えを待つ、という構図になっている。これはアニメ版のように水浴びの方が自然だし、雨季を示すさわりとしてもふさわしい。
さらに原作ではギレーヌの指輪をエリス自らがギュエスに対して「ギレーヌって知ってる?」と切り出すところを、アニメ版では人間語を教えるシーンでギュエスが気付く、という流れに改変してある。エピソードを削らずに、自然に展開していく脚本には感動さえ覚える。
族長候補のミニトーナ
CM明け、トーナはエリスと木剣を楽し気に打ち合うほどに剣の腕が上達している。長い雨季ももう三か月が過ぎた、ということらしい。
雨季が終わり、次の街にいける、と喜ぶエリスだったが、トーナは泣きそうな顔で悲しむ。
ルディは聖獣様に懐かれつつ、ルイジェルドのフィギュアを完成させたようだ。
かわいいなぁ、と聖獣様にじゃれつくルディを、相変わらずのさげすんだ目で見るラクラーナさん。
聖獣様は世界の危機に出現し、大人になると英雄と共に旅立つと言い伝えられている大切なお方なので、発情するのはやめてほしい、という。
アニメ版では流したが原作では発情の対象はラクラーナさんだったりする。下品エピソードはアニメ版冒頭ののぞきシーンで足りているのでカットしたのだろう。
そんな話をしていると、エリスとトーナが殴り合いのけんかを繰り広げている。フィットア領に向かいたいエリスと、ずっていてほしいトーナの気持ちがすれ違ったようだ。
ギュエスがトーナを、ルディがエリスを羽交い絞め。まだ闘おうとするトーナの様子を見て、エリスに対して「ちゃんと手加減したんですね」と成長を褒めるルディである。フルスイングで相手の心を折るまで殴るからねエリスさん。
トーナはあんなわからず屋、とふて寝している。ギュエスはエリスとの剣の修業の感想を聞き、トーナは「ちょっとクセがあるけど真剣でまっすぐな感じニャ」と答え、ギレーヌはいい師匠だったのではないかと推察する。
ギュエスはかつてギレーヌが手の付けられない暴れん坊だった頃を思い出し、言葉さえ覚えようとせず魔物のようだった、と振り返る。旅の剣士に連れられて村を出た時にはせいせいしたらしい。しかし今では、もっと分かり合えたのかもしれない、と後悔しているようだ。
一方エリスも喧嘩別れになることに心残りがある様子。トーナ達が来る気配を察し、聖獣様とともにそっと小屋の外に出て席を外すルディだった。
素直に謝るトーナに、仕方ないわね、と許すエリスである。トーナとテルセナから手彫りの人形をもらい、楽し気に笑う。
エリスとギュエス、対決シーンの新カット
そして旅立ちの日、ギュスターヴは魔物討伐の礼を述べつつルイジェルドと握手を交わす。いつの間にこんな仲良く?と不思議がるルディ。
原作では、最近の若い者は、というネタでさんざん盛り上がったので仲良くなったことをルディは知っている。アニメ版では、あえてルディは知らないことにした。何があったのかという想像を喚起するので、とてもシーンが豊かになる。
別れを惜しむシーンの感慨はエピソードの深さで決まる。エリスを軸にルディを描き、ルイジェルドは出番が少ない今回の構造では、想像に任せるのが一番だ。いやしかし凄いな今回の脚本は。
ギュエスはエリスに手合わせを願う。ギレーヌの教えたという太刀筋を剣を見たいとのことだ。
聖獣様のワン、で互いに踏み込み、交差する剣。ルディは何が起こったのか分からない。しばらくして「あーっ、もうっ!!」と叫ぶエリス。どうやらエリスの負けらしい。
ルーデウス、またここに来るわよ、と涙を拭きながら偉そうに下知するエリスだった。
馬車が行く中、追いかけてくるギース。ギースによると、この長い街道は、ミリス神聖国の開祖である聖ミリスが剣で一閃して作ったらしい。
ふと街道のわきに目をやると、紋章の入った石碑がほこらのようなものと一緒に置かれている。七大列強の石碑らしい。1位から順に、技神、龍神、闘神、魔神、死神、剣神、北神の順とのこと。
七大列強の話題に、ぜひ会ってみたいわ、とエリス。フラグである。見たことない、まゆつば物だと切って捨てるギースだ。
ルイジェルドが敵わないような相手と敵対したら命がいくつあっても足らない、というルディのモノローグでエンディング。こちらもフラグなのである。
次回は「親子げんか」
次回は「親子げんか」。親子、といえばあの親とこの子のけんかですね。はい。ついに再会です。いくつかある山場の一つだね。ターニングポイントはだいたいブルーなので谷間ということで。
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