相棒17 第9話「刑事一人」感想 伊丹&元日SPへの伏線回

相棒17の第9話「刑事一人」は、ネオナチ風情の若者、派遣切り、外国人排斥、といった日本の今を、伊丹を武器に俯瞰して描く社会派回だった。正義を伊丹に与えることで、周りの人間はこの問題を冷静に俯瞰できる。受け手にとっては、サイコパス断罪系のスッキリ回にも見え、根っからの悪人はいないというボーダーライン回として心に入ってくる。 ネタバレ前に、あらすじは以下。

サルウィン共和国から働きに来ていた外国人青年が変死体で発見される事件が発生。同じ飲食店で働いていた青年の姉によると、最近、外国人を狙った襲撃事件が相次いでいるという。しかし、なぜか警視庁は手を引き、捜査は所轄だけで行われることに。その方針に不満を持った伊丹(川原和久)は、単独で捜査を開始。それを心配した芹沢(山中崇史)の頼みで、右京(水谷豊)亘(反町隆史)も動き始める。サルウィンといえば、かつて特命係に在籍した“初代相棒”の渡航先だが、政情は相変わらず不安定なようで、襲撃を受けた被害者の中には所在不明の者もいて、捜査は難航する。そんな中、右京は、圧力をかけたと思われる衆議院議員・敷島(井上肇)に注目し、その息子・純次(藤原季節)に疑いの目を向ける。いっぽう、単独捜査を続けていた伊丹は、人気のない深夜の路上で覆面姿の集団に取り囲まれて…!?

一人、卑劣な犯人を追う伊丹に迫る魔の手… 殺人の背景に現代日本が抱える社会問題が!? 外国人襲撃事件をめぐり警視庁に激震が走る!

ゲスト:井上肇 藤原季節

分散するヘイト

脚本はスペシャル回の印象が強い真野勝成氏。監督は権野元氏。外国人犯罪、政治家、所轄、入管といった定番の仕掛けで、それぞれの哀しみと人物をじっくり描く回だった。

最初に出てくる犯人役は、4人組の少年たち。外国人とみれば警棒で暴行し、反撃を受ける前に自転車で逃げ去る。ナイフを持ち出すところまではいっていない。いわゆる半グレとは違う。ステレオタイプな悪を演じているだけの、一皮むけばまだ子供、といった演出がなされている。ヘイトを集める役として描いていないところが相棒の相棒たるところだろう。

正義として舞台を回す伊丹

ところが少年たちの被害者とみられるある外国人が、死体となって発見される。伊丹が立ち寄った牛丼店の店員だ。笑顔を絶やさず、必死に生きている。 伊丹はランチタイム限定の割引クーポンを使おうとするが、使用時間外なため使えず、店員とのやり取りの中で普通に納得する。その後、機捜の呼び出しに応じて現場に急ぐと、仏は先ほどの外国人だった。 少年たちを容疑者に捜査を続ける伊丹に、上層部から待ったがかかる。当然、引き下がらない伊丹。そうね。今回は伊丹回ね。と思いきや、途中でどんでん返しがある。 伊丹は単独捜査であえておとりになり、案の定襲撃してきた少年たちに反撃。取り逃がすも特命係との奇妙な合同捜査で逮捕に成功する。その取り調べ中に、外国人排斥のヘイトを吐く少年を暴行してしまう伊丹。監察から懲戒免職を示唆されるところまで至ってしまった伊丹を何とか守る成り行きか…と眺めていると、実際には殺害していないという疑惑が浮上する。

完全悪ではない真犯人

結局、被害者は派遣切りのうっ憤を晴らすために殺されていた事実が判明する。少年たちの容疑は傷害だけということで、一転して「ラッキー」を連呼。「世の中をなめるんじゃない!!」と啖呵を切る右京に、絶句する少年。今回の少年は、まだ言葉の届く存在と描かれる。 最後は警察上層部に圧力をかけた、少年の父親たる政治家、という本丸に切り込むが、しょせん一議員。少年の逮捕によって圧力をかけたことは問題になる、もみ消せない。そんな右京の論破にあっさりと負ける。さらに伊丹への暴行の訴えを取り下げる。息子を理解できなかったが愛情は注ぎたかった父親。父親の愛情をひずんだ形でしか試せなかった少年。

次は元日スペシャル

オチは外国人の出身国であるサルウィンネタでしっとり終わる。サルウィンに行った相棒が一人いましたね。と感慨にふけっていると、元日スペシャルの予告。そして神戸さん! 年内の相棒は無し。来年もよろしくお願いいたします。

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