無職転生Ⅱ 第19話「砂漠の旅」ネタバレ感想 巧みな疾走感

無職転生Ⅱ第19話「砂漠の旅」は、ゼニス救出に向けベガリット大陸へと向かう回。来週からの迷宮編に向けて、巧みな脚本とコンテで物語は疾走する。六面世界の秘密がやんわりと明かされているので伏線も多い。

ネタバレ回避のあらすじは以下。

ギースからの「ゼニス救出困難、救援求む」という手紙を受けたルーデウス。妊娠したシルフィやノルン、アイシャを残すことになる…。悩みながらもベガリット大陸の迷宮都市ラパンへ行くことを決意する。しかしその道のりは、想像以上に険しく、命の危険を伴うものだった。

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先を急ぐルーデウス(と脚本)

アバンはルーデウスとエリナリーゼさんの相談シーンから。ベガリット大陸に行くと決めたものの、エリナリーゼさんは呪いの影響で禁欲不可な状態。片道で8カ月はかかる長い旅路、しかも娼館も無いような僻地では、ルーデウスが相手をするしかない…のだが、クリフ先輩が開発中の魔道具なら禁欲期間を延ばせる。

とはいえクリフと別れて旅立とうとしていたエリナリーゼさん、まだベガリット大陸行きを伝えていないらしい。クリフ先輩にきちんと話をし、魔道具を借りるように促すルーデウスだった。

往復16カ月、迷宮都市ラパンでの問題解決にかかる時間を考えると何だかんだで2年はかかる。挨拶回りをしに、ナナホシの研究室に向かう。2年ほど旅に出ます、と伝えたところ、呆然とするナナホシさんである。魔法陣への魔力供給が無ければ実験もできない。

ベガリット… 、迷宮都市ラパン…、2年…? と心ここにあらずなナナホシさん。去ろうとするルーデウスを呼び止め、これを見て、と地図の束を差し出す。オルステッドと旅をしていたときに、世界各地にある転移魔方陣を書き留めたものだ。魔法都市シャリーアからベガリット大陸への転移魔方陣が存在し、転移先から1カ月ほどでラパンに着くのだという。

転移魔方陣の地図は日本語で書かれている。後で出てくるが、転移魔方陣を出現させる方法や使い方なども記されているようだ。

間に合う、シルフィの出産に。と顔をほころばせるルーデウス。ナナホシは「恩を返しただけよ。早く戻ってきて、研究を手伝ってよね」と素っ気ない。

六面世界の死亡フラグと

場面変わってルーデウス宅。シルフィー、ノルン、アイシャを前に、父さんと母さんを助けにいこうと思う、とベガリット大陸行きの決意を打ち明ける。転移魔方陣が使えるので出産までには戻れると思う、と話すと、転移、という言葉に反応して不安げになるシルフィーだった。シルフィーを抱きかかえ、絶対に帰ってくるから、と落ち着かせるルーデウス。

同じく不安げなアイシャには、何でも一人でやるな誰かを頼れ、真っすぐな視線を向けるノルンにはシルフィーやアイシャを助けてやれ、と声をかけるルーデウス。ふと思いついたように「子供の名前だけでも行く前に決めておこうか」と言ったところ、全員ドン引きである。

なんでも旅に出る前に子供に名前を付けると帰ってこられないらしい。この世界の死亡フラグだったか、と理解するルーデウスである。

旅立ちが決まったので、挨拶回りをするルーデウス。バーディガーディは不在で、リニアとプルセナ、ジーナス教頭、ザノバとジュリ、ジンジャーだ。前世の男の声で、ベガリット大陸行きの計画を説明するシーンのバックに、それらの挨拶回りがセリフ無しで描かれる。

ジーナス教頭には、転移とベガリット大陸にまつわる本の貸し出し許可をもらったらしい。アニメ版では書名に言及が無いが、『転移の迷宮探索記』と『ベガリット大陸と闘神語』の2冊だ。

原作では、このリニアとプルセナ、ジーナス教頭への挨拶、さらにはクリフへの挨拶も、ナナホシの前に行っている。かかる時間を2年と見積もっての挨拶だ。そしてナナホシへの挨拶で帰還が大幅に早まることが分かり、最後に、という書きぶりでシルフィーに伝えるのだ。

アニメ版の脚本では、挨拶の順番を入れ替え、リニアとプルセナ、ジーナス教頭、ザノバやジュリとの会話をバッサリ切っている。旅立ちを告げる相手としての順番は、むしろアニメ版の方が自然かもしれない。ナナホシはメンタルブレイクの経緯があるので、まず告げなくてはいけない人ではあるし。

台詞の無いジンジャーのシーンも「ここから1週間で転移魔方陣のある森へ行き」という前世の男の説明台詞をバックに馬について何かを説明するジンジャーの画、ザノバとジュリも登場、というコンテになっている。

ああ、1週間かけて馬で行くのだな、騎士団だからジンジャーは馬に詳しいのだろうな、と予備知識の無いアニメ組にも分かるようにしている。説明は視聴者に向けたものと同時に、挨拶回りをしている登場人物への説明でもある。

旅立ち

旅立ちの朝、クリフ先輩から魔道具を受け取るルーデウス。クリフ先輩は、呪いの症状進行を遅らせるオムツっぽい魔道具をルーデウスに渡しつつ、エリナリーゼさんには帰ってきたら式を挙げよう、とプロポーズする。この下り、原作では挨拶回りのときに済ませている。

旅立ちの間際に帰ってきたら結婚しよう、という台詞。こっちの世界の死亡フラグだ。挨拶回りの時より、このタイミングで言う方が異世界を感じさせて面白い。今回の脚本は、コンパクトかつ印象的にエピソードをまとめていくので、見ていて心地が良い。

転移魔方陣までは一気だ。さっき出てきた馬(名前は松風)で草原を駆け、森に入り、一緒に付いてきてもらった冒険者風の男に馬を渡して帰ってもらう。原作だと軽い戦闘シーンもあるがそんな暇は無い。

小説版11巻を駆け抜ける

転移魔方陣は、この世界、人界では禁術となっている。普段は結界によって秘匿され、存在を知覚できない。ナナホシから教えてもらった呪文で、施設を出現させる。

呪文はアニメ版でもフルで詠唱された。音だけだといまいち分かりにくいが、龍、という言葉だけ聞き取れれば進行上は問題ない。

「その龍はただ信念にのみ生きる。広壮たる腕(かいな)からは、何者をも逃れることはできない。二番目に死んだ龍。最も儚はかなき瞳を持つ、緑銀鱗の龍将。聖龍帝シラードの名を借り、その結界を今うち破らん──」

出現した遺跡のような施設に入り、転移魔方陣を見つけるルーデウスたち。手元の本、『転移の迷宮探索記』にある双方向の転移魔法陣にほぼ一致することを確認する。なんですの?とエリナリーゼさんがルーデウスに聞いて、セリフとしてルーデウスの口から語られる。

転移には嫌な思い出が、と躊躇するエリナリーゼさん。おそらく3期以降で出てくるゼニスに関するエピソードの伏線でもある。割と重い話なのでどこまで踏み込むかは分からないが。

転移魔方陣に足を踏み入れたところでAパートが終了。そう。ここまでAパートでしかない。

転移した後、いったんエリナリーゼさんだけがシャリーアに戻れるかどうか確かめる。かかった時間は転移といっても瞬時ではなく、数分以上かかるようだ。原作では片道7分程度、とある。だいぶ後で種明かしがあるが、世界間にある何もない空間、ヒトガミがいる空間、転移魔法はそこを移動している。

転移先の施設の中でルーデウスが見つけてげんなりする服は、オルステッドの防寒具だ。

1期のターニングポイント2でオルステッドが着ていた服なので、見覚えがあるはず。そりゃうへぇ、ってなるわ。

砂漠の旅

砂漠の旅。原作では、砂漠ならではの戦闘を繰り返し、途中で隊商とその護衛を助けてひと悶着あるそこそこ長いシーンだ。アニメ版では、サキュバスとの戦闘、サソリとの戦闘、グリフォンとの戦闘、でラパンに到着する。

サキュバスとの戦闘では、催淫効果でエリナリーゼさんに「スケベしようやぁ」と言って迫ってしまうルーデウス。戦闘後、エリナリーゼさんに「スケベしようやぁ」とこすられるのであった。原作だと、茶化しているからこそしない、という説明がもう少しあるのだが、アニメでは簡潔にああネタなのね、で流されている。本当にエッセンスがよくまとまっている。進行は早いが省略された感じは微塵もない。

減殺の隊商護衛シーンでは、盗賊団に襲撃され、無意識に殺傷を避けた結果として仲間を一人失う、という場面がある。家族を守るためなら人殺しもいとわない、という決断ができるかどうかルーデウスは逡巡する。結局、せめて身を挺して守ろう、と決心するところに落ち着く。

ルーデウスが殺傷を避けるという、現実世界の価値観を引きずったまま家族を守ろうと決意するのは、無職転生という物語の中で重要な要素の一つではある。これまでも、これからも、度々出てくるシーンなので、今回はカットでいいのだろう。

次回は「迷宮入り」

次回のタイトルは「迷宮入り」。ラパンに着き、パウロたちと合流して迷宮へと向かう。原作小説版の12巻の始まりだ。そして2期は、おそらく12巻で終わる。

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