無職転生Ⅱ第1話「失意の魔術師」から。原作7巻の本編スタートだ。アニメ版ならではの、ルーデウスが生と死の狭間に際して再起のきっかけをつかむ描写が今後を期待させる。
ネタバレ回避のあらすじは以下。
母・ゼニスを探すために歩き出したルーデウス。しかし、エリスに姿を消された失意の底から抜け出せずにいた。北方大地に向かう馬車の中で冒険者パーティ“カウンターアロー”のサラとスザンヌに出会ったルーデウスは、冒険者ギルドにあったある依頼のためにカウンターアローに同行する。
https://mushokutensei.jp/story/2-01/
無気力なルディにイラつくサラ
エリスに去られ、失意のどん底にあるルディ。アバンは、誰に相談するでもなく、ため息をつきながら単独行を続けているルディの描写から始まる。
声をかけてくれるのは冒険者、護衛として隊商の馬車に乗る冒険者パーティ「カウンターアロー」のスザンヌだ。龍神オルステッドと闘い生き残ったルディではあるが、まだ13歳に過ぎない。何も聞いていない、心が失われたようなルディに、スザンヌは少しでも慰みになればと声をかける。
同じくカウンターアローの弓使いサラは「(止めておけばいい)」と言わんばかりの表情で、スザンヌに呆れている。ルディのぞんざいな受け答えに「何よその態度!」と声を荒らげる。
話を止めようとしないスザンヌに、ルディはフィットア領の転移事件に巻き込まれた母を探しにいくのだと、事情を打ち明ける。ルディが転移事件の被害者と知り、バツの悪そうな顔をするスザンヌとサラ。
一向に目を合わせようとしないルディに、北方大地の説明を雑談として披露するスザンヌ。魔法三大国と呼ばれる三つの国、魔術の教育に長けたラノア王国、魔道具の製作に長けたネリス公国、魔術の研究に長けたバシェラント公国があるのだという。この3国家は同盟を組み、力を合わせて魔術を発展させてきたようだ。
嫌な大人が減っているアニメ版
隊商はバシェラント公国第二の都市、ローゼンバーグに着く。アスラ王国から約二カ月の距離、と原作には記述がある。
ま隊商宿を探すルディ。宿屋の店主はそつなく受け答えをし、ぞんざいにアスラ銀貨を一カ月分の宿代として置くルディに戸惑う。
小説版では、ルディを見るなり嫌な顔をし、金を出せば満足する、という宿屋の主人だが、アニメ版では人のよさそうな人物として描写されている。
この改変は、アニメでは妥当な演出だろう。若い冒険者を気をかけ迎える大人として、スザンヌと宿屋の主人を配置しているのだろう。
ルディ自身の自暴自棄な行動を印象付ける改変としては、冒頭の雪の中を進む商隊、という描写がある。小説版ではまだ雪の季節、厳冬期ではない。宿に着いたルディは、薪の入った暖炉に火をつけるわけでもなく、ただ横になる。
何もかも面倒になったルディ、というのを印象付けるには、雪の森を越えゆく馬車、の方が効果的な気がする。
冒険者ギルドで目立つルディ
冒険者ギルドに向かったルディは、冒険者カードを差し出し、パーティの解散を申し出る。ルイジェルドとエリスと組んだ「デッドエンド」の解散だ。デッドエンドを解散し、依頼を受けようとする。
依頼は石板のようなものに書かれている。小説版では「大量の依頼紙」とあるが、なぜ石板なのか。先ほどの冒険者カードは、六面世界では魔道具である。先にスザンヌが説明した、魔法三大国の設定が生きる。ならば依頼紙も魔道具にしよう、ということなのではないか。
無職転生では、七大列強を示す魔道具の石板が世界各地に設置されている。これは序列が入れ替わると自動で反映される仕組みだ。おそらくギルドの依頼は自動で書き換わるのだろう。
A級の依頼を受けようとするルディに戸惑う冒険者ギルドの受付嬢。やんわり断ろうとすると、スザンヌが一緒に依頼を受けないかと声をかける。
結局、依頼を受けることにしたカウンターアローとルディ。サラはむくれたままだが、そのやんちゃぶりに狂犬エリスの面影を感じて気に掛けるルディだった。
再起するルーデウス
ルディはカウンタアローの面々と合流し、
ここで副リーダー、としてスザンヌが自己紹介する。リーダーは魔術師のティモシーだ。
ラスターグリズリーに、中級魔術「大火球」を連打するティモシー。
楽観ムードが漂う中、ルディは地面に耳を付け、様子を伺う。突如現れる、泥をかぶって迷彩を施したラスターグリズリーの群れ。
ルディが状況把握に気を払うのは、アニメ版オリジナルの描写だ。魔大陸を旅したルディの実戦経験をアニメ組にも印象付ける。
ルディは向かってくるラスターグリズリーを前に、何もかも諦めたかのようなそぶりを見せる。スザンヌが割って入り、ラスターグリズリーを足止めする。
諦めたルディと、諦めないカウンターアローの面々、という描写が続く。
無詠唱なのでアニメ組には分からないが、上級魔術の「獄炎火弾(エクソダスフレイム)」を放って残りのラスターグリズリーを一網打尽にする。
ランクと級を省いた「判断」とは
小説版との大きな違いは、今回の依頼の説明描写だ。
小説版では、今回の依頼がAランクであること、ルーデウスの力量を見抜いたスザンヌがルディの力を当てにしてB・CランクではなくAランクを受けたこと、といった事情が明かされる。カウンターアローでA級冒険者はサラだけで、A級を受けるには心もとない戦力だ。
アニメ版では、ソロでは受けられない依頼、という説明しかない。なので、ルディを戦力としてみなさずに声をかけたのか、内心を明かしていないだけなのかは、確定できない。スザンヌが「それなりに腕は立つんだろう?」とルディを評価するシーンがあるだけだ。
依頼のランク、冒険者の級を脚本に組み入れると、説明無しでは判断がぼやける。ラスターグリズリーの討伐依頼に対して、夜目が効かないラスタグリズリーの特性を生かし、ティモシーの大火球で楽観ムード、という流れには、ランクと級は不要だ。
そんなこんなで冒険者ギルドに戻り、その場にいる冒険者たちに酒をおごるティモシー。
ルディは宿に帰り、ロキシー師匠のご神体を握り締め、本気で生きていこうと思い直してエリスの髪を暖炉にくべて燃やす。ロキシーに外に連れ出されたときの回想が差し込まれ、初めてオープニングテーマ曲の「spiral」が流れる。
次回は「真夜中の森」
1話のエンディングで、オープニングテーマが流れる演出ということで、次回からが本当のスタートと言える。2期の前半は小説版の7巻で大幅に加筆された要素だ。紋切型の挫折と復活をいったんぐちゃぐちゃにし、人間のややこしさで厚みを与えてくれる。サラとの出会いと別れ、そして再会の描写は、実に人間臭い。
次回は「真夜中の森」。S級冒険者のゾルダートが登場する。
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