「その着せ替え人形は恋をする」のアニメ版9話は、原作を完全に再現するかのようなカット割りで、心寿を巡るジュジュ様と海夢のあれこれを映像化した回だ。あえて漫画のコマと同じ画角にするシーンがあるなど、ある意味実験回でもある。
ネタバレ回避のあらすじは以下。
STORY
https://bisquedoll-anime.com/story/?id=09
海夢も協力しながら、ようやく完成したブラックロベリアとブラックリリィの衣装。紗寿叶とともにさっそく試着した海夢は、完璧な仕上がりに大感激。待ちに待ったコス合わせへの期待がさらに膨らんでいく。そして迎えた当日、海夢と紗寿叶の前に意外な人物が現れる。
STAFF
脚本
冨田頼子
絵コンテ
山﨑雄太
演出
山﨑雄太
作画監督
田村里美、村井夏織
見せブラの海夢
アバンはコスプレ衣装の買い出し帰りの新菜と海夢のシーンから。ブラックロベリアのコスプレ用にハイレグの水着を着こんできた海夢に、毎度のように新菜がビビる。
で、この回は原作再現を突き詰めた回らしく、コミック風のカットが入る。
ブラックロベリアのソウルジェム…じゃなくてフラワージュエルを自作し、早速胸にあてがおうとする海夢。見せブラだから平気~と脱ぎ始める海夢だったが、実は普通のブラで愕然とするところでアバン終了である。
ブラックリリィのコスプレ衣装に惚れこむジュジュ様
CM明け、完成したブラックリリィの衣装を見にジュジュ様がやってくる。サイズもぴったりよ、素敵、とうっとり。少しスカートのフレアが弱いものの、硬めのチュチュで広げるから大丈夫らしい。
アニメ版の衣装描写はやっぱり控えめ。陰影や光沢を付けようと思えば付けられるだろうに、あくまでも人物が浮き立つような絵作りになっている。
コスプレは衣装だけではなく、メイクやヘアスタイルも重要である。テープを使って目じりを上げ、ブラックロベリアの顏にしてもらう海夢。
廃病院でのスタジオ撮影
コスプレ合わせを楽しみにしていたところ、本番の日は雨模様。それでも海夢はジュジュ様との合わせに喜び倒している。ジュジュ様はいつものように冷めた様子である。
原作ではマンガ読みの視線移動として自然な構図として、右に海夢、左にジュジュ様、というコマになっている。
アニメでは、左から右、というのが自然なので、この自撮りカットの構図は原作とは左右逆である。
これは、原作の意図である、喜ぶ海夢→戸惑うジュジュ様、というのを再現するのが目的なので、単に原作をなぞっているだけではないのがよく分かる。
コスプレ心寿
海夢とジュジュ様の前に、心寿と新菜が現れ、驚くところでAパートは終了。ロケハンの日の回想シーンに移る。
いつの回想シーンかすぐ分かるようにテロップが入っている。
原作では、ロケハンの日も天気が悪かったこともあり、いつの回想シーンかしばらく分からなくて不安になった記憶がある。これがロケハンの日は晴天、本番は雨、とかだとよいのだが、同じトーンで場所が変わるだけだと戸惑ってしまう。
で、この回想シーンでは、実はコスプレをしてみたい心寿の心を見抜き、新菜が颯馬(そうま)お兄ちゃんの男装コスプレ衣装を心寿に作ってあげる過程を描いていく。
この心寿のシーン、完全に原作のコマ割りなのが面白い。
颯馬お兄ちゃんのコスプレ衣装は、新菜の学校の制服に似ている。心寿に試してもらったところ、お胸が大きめゆえボタンがはじけ飛ぶ。
パンッ、の文字とかトレースかと思ったわ。
ボタンが壁に飛ぶカットは、アニメらしいシュゥゥゥ…!的な効果があってとてもよい。構図は原作と完全に同じである。
心寿用のウィッグを新菜がカットしてカスタマイズするシーンでも、原作準拠は徹底している。例えばこれ。
心寿に向かって新菜が海夢への憧れを名を出さずに語るシーンで、原作では横長のカットを縦に並べていく。アニメ版は、この横長のカットを下手に拡張せず、黒帯で省いたのみである。
回想シーンが終わった後、コスプレした心寿に驚くジュジュ様と海夢のシーンも同様だ。
原作では、見開きページで心寿を囲むジュジュ様と海夢をダイナミックに魅せている。アニメ版は、右と左のカットを、両方の顔を見る心寿、という構図で素早く切り替えることで疑似的に見開きページを表現している。
撮影開始、で9話は終わり
心寿を加え、3人の合わせとして撮影が始まったところで9話は終わり。おそらく10話のアバンで、このジュジュ様&心寿編のクライマックスを描くのだろう。
9話のオチにクライマックスを持ってくるには、コスプレの過程の何かをカットするしかない。原作の尺が不足気味の着せ恋でなければ、脚本でバッサリ切ったシーンがもう少し増えていたかもしれない。
今回は絵コンテ・演出が山﨑雄太氏ということで、着せ恋では初登板のようだ。毎回、原作へのアプローチの違う着せ恋が見られるのはとても面白く楽しい。
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