その着せ替え人形は恋をする 第8話「逆光、オススメです」ネタバレ感想

「その着せ替え人形は恋をする」のアニメ版8話は、逆光をキーワードに、新菜と海夢のラブコメを描く王道回。原作をあえてレトロな演出と劇伴で描いている感がある本作だが、この8話で見事に花開いている。演出と絵コンテを川上雄介氏、作画監督を小林恵祐氏が手掛けるこの回、一味違う。

ネタバレ回避のあらすじは以下。

STORY
ジュジュのカメラマンをしている、紗寿叶の妹・乾心寿と初対面した新菜と海夢。紗寿叶と正反対の外見に驚くも、カメラ談議で盛り上がり、すぐに打ち解ける。さらに紗寿叶の提案で、“合わせ”本番に備え、四人で廃病院スタジオのロケハンに向かうことになるのだが……。
STAFF
脚本
冨田頼子
絵コンテ
川上雄介
演出
川上雄介
作画監督
小林恵祐

https://bisquedoll-anime.com/story/?id=08

専属カメラマン心寿

アバンはジュジュ様の専属カメラマン、妹の心寿のノロケから。姉のジュジュ様のコスプレに惚れ込み、カメラの腕を磨き、ネットにアップする。ジュジュ様のことが大好きなんだね、という海夢に、大好きですっ!と声を張り上げる心寿。ジュジュ様が照れるところでオープニングへ。被写体に対する視線が作品を作る、という写真の基本を軽く説明した格好だ。

ジュジュ様をプロデュースする心寿さん、中学生である

CM明けは、カメラやコスプレ撮影にまだうとい新菜と海夢の疑問に、心寿が答える形でカメラや撮影、レタッチの基本を説明していく。

話の流れで、海夢が「コスしないの?」と心寿に聞くと、一瞬遠くを見るような表情になってから「無いですっ」と断言する心寿。姉を撮るのが好き、というが、心は別のところにあるような描写になっている。まあそうなんだけど。

コスプレしないの?と言われたときの心寿

一眼レフカメラって、と値段を調べて絶望する新菜。一方海夢は、価格の高さはともかく購入自体は既に決定事項である。

なお正確には心寿が使っているのはレンズ一体型のミラーレス一眼カメラであり、一眼レフではない。レフとはレフレックス(反射)の略。レンズからの光をミラーで反射させてファインダーに導き、シャッターを押すとミラーが上がって撮像センサーに光が入る仕組みが一眼レフだ。ここではそんなめんどくさい突っ込みを入れるキャラは存在しないので忘れておこう。

廃病院でのロケハン

場面変わって週末、廃病院のスタジオへのロケハンに向かう。フラワープリンセス烈!!のコスプレのシーンにぴったりですね、という新菜に、ジュジュ様はホントに全話見たのね…と呆れつつ感心する。

途中で天気が悪くなり、暗くなる廃病院。心霊スポットが苦手な様子のジュジュ様は身をすくめてしまう。その様子を心配する新菜は、無理しなくても…、とジュジュ様に声をかける。

ジュジュ様は無理をする理由を答える前に、先んじて新菜に「あなたの夢って何?」と聞く。頭師、と答える新菜に、ジュジュ様は「魔法少女になりたかった」と、昔話を始める。初めてのコスプレが本当にうれしかったこと、その喜びの為には、無理をしてでも夢をかなえたいのだという。

ジュジュ様の原体験、初めての魔法少女コスプレ

ジュジュ様のコスプレへの思い入れを聞いた新菜は、そんなに大切ならなぜ自分に依頼をしたのか、と疑問に思う。新菜からすれば、まだ自分たちのコスプレ衣装を未熟と感じているからだ。

ジュジュ様は海夢がアップした雫たんコスの写真に「嫉妬したのよ」と吐露する。一目ぼれだった、とまでさえ言う。

このジュジュ様の言葉が、新菜の原体験である「一目ぼれさせるような雛人形を作りたい」という過去に呼応し、新菜の琴線に触れる。嬉しさのあまり、泣きながらジュジュ様の手を握る新菜。

感極まった新菜の行動力も大したものである

ところが女子高育ちのジュジュ様、新菜に手を握られるだけで耐性が無く人としての電源が切れるところでAパートは終わりである。その着せ替え人形はまだ恋をしていない。

いいよねこのカット。これぞアニメだよ

ふたりの海

Bパートは、学校帰りに、いきなり「海いこうぜっ!」で。新菜を連れ出す海夢。次のシーンはいきなり海岸である。原作では電車のカットが1コマ入るだけ。埼玉からだから、湘南新宿ラインで神奈川か、武蔵野線か東武アーバンパークラインで千葉か。原作を読んでいなければ、一瞬高校が海浜幕張にあったっけ?と思わせるほどの場面転換=海夢の行動力の演出、を出してくるのがよい。

江ノ島だった

あれ埼玉の近くに海あったっけ?と思わせれば勝ち、という演出である。

いきなりの海。撮影に来たんですか?と目的を聞く新菜に、海夢は7月じゃん、夏じゃん、で海いくべ!なのだとあっけらかんと答える。

ハンバーガーを昼食に買い、海辺を歩く二人。トンビに海夢のバーガーはさらわれるも、気にしない海夢の表情に目をやる新菜。このくだり、原作には無いアニオリ要素である。

逆光の海夢
とにかく明るい

ハンバーガーにしらすって合うんですね、という新菜。シラス?と思って調べたら、江ノ島名産らしい。そうか。ここは江ノ島か。たしかにトンビいるわ。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001088.000006302.html

海夢の告白

海に入り始める海夢に付き合い、新菜もまた海に入る。まるで海が初めてのようにふるまう新菜に驚く海夢だったが、新菜は本当に初めてなのだと答え、その理由を語る。小さいころから雛人形の面相書きに没頭し、そればかりだったのだと。いったことがない場所が多いのだと。

そんな新菜を真剣な顔つきで眺める海夢。

はい神カット。海夢はいつでも真剣なのです

新菜は、薫に色々な体験をしろ、と言われたことを海夢に話す。しばしの沈黙の後、「私とっ、いろんな所にいこうよっ!」と唐突に新菜に言い出す海夢。

ほとばしる言葉

しかも「ふたりでっ!」とまで言ってしまう。

…綺麗です

新菜は鈍感、というか、まさか今でも縁遠い存在だと思っている海夢を前に、客観的には告白というシチュエーションであることに気が付かない。顔真っ赤なところを見られまいと後ろを向く海夢である。

あー、言ってもうた、感

海を見る新菜を、逆光のライティングで撮る海夢。逆光の良さをロケハンの時に心寿から聞いていた海夢さん。マジだ…めっちゃいいじゃん…(尊い)と撮ったばかりの写真を見る。

その着せ替え人形は恋をした

ワカメに足を取られて転び、全身びしょ濡れの新菜と、乾く乾くっ…たぶんっ!と笑い飛ばす海夢の掛け合いで8話は終わり。

演出と劇伴、8話の奇跡

この8話、劇伴がこれまでになくマッチしていて、本当に心地よい。あえてレトロな演出と劇伴を上質の作画で見ていると、心が温かくなる。作品のレベルが一段上がっている。

振り返って制作陣を見ると、演出・絵コンテの川上雄介氏、作画監督の小林恵祐氏、この両氏が手掛けるのは今回が初めてだった。両氏の担当回がまたあるかどうかわからないが、とても楽しみである。ジュジュ様との合わせの最後の回くらいでまたやってくれないかな…

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