無職転生Ⅲの第10話「不死魔王との謁見」は、ナナホシの治療薬となるソーカス草を持ち帰るために不死魔王アトーフェと戦う回だ。片や不死族、片や人族中心のパーティー。あくまで勧誘の構えで戦うアトーフェに負けそうになるも龍族の力を借りて勝つという、この先のメインバトルの縮小版と言える回でもある。
ネタバレ回避のあらすじは以下。
「ドライン病」の治療手段を知るべく魔大陸に飛んだルーデウスたちは、キシリカを見つけ出した。しかし、キシリカを狙う不死魔王アトーフェラトーフェの親衛隊にキシリカと共に連れて行かれてしまう。アトーフェラトーフェと対峙したルーデウスは彼女の親衛隊へと誘われるが…。
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10話のアバンは、正体を現したキシリカの独擅場。クリフが褒美として求めたドライン病の治療法にも、ソーカス草を茶にして飲めばいいと、あっさり答える。病名が分かってからも解決の見通しが立たなかった一行の顔に、ようやく安堵が浮かぶ。

ところがキシリカは真剣な表情で、その草が生えていた洞窟は第二次人魔大戦の終わりに消滅したと話す。ではもう手に入らないのかと気を揉ませたところで、美味いから城の地下で栽培させていると明かすキシリカ。なんちゃって発言に殺意以外の感情が浮かばないルーデウス達である。

希望を見つけたルーデウス達を、黒い鎧の一団が囲む。キシリカを追う不死魔王アトーフェラトーフェの親衛隊だ。アトーフェが楽しみにしていた酒をキシリカが飲み尽くしたとのことで、キシリカの引き渡しを要求される。
指揮を執る老兵はソーカス草の栽培にも詳しく、鉢植えも用意すると申し出る。あっさり土魔法で手錠をかけるルーデウス。一行がキシリカ城へ向かうところに、「光の唄」を重ねた特殊オープニングが始まる。
城の内部には大きな穴が開き、その周りに柵や展示物が並んでいる。原作でも一般公開され、入場料を取る観光名所として説明される場所だ。魔王たちの残した城が、今は人の訪れる遺跡になっているという時間の厚みを感じさせる。

薬草を採りに行くクリフたちと分かれると、老兵はルーデウスに、褒美を受け取らないよう釘を刺す。原作では謁見を待つ間の忠告だが、アニメではアバンの最後に置かれた。薬草の入手まであと少しというところへ、受け取ってはいけない褒美という軽いフックを残して、Aパートへ進む。
受け取れない褒美
謁見の間で待たされること二時間。親衛隊の者たちも、なかなか来ない主について話している。会話は魔神語で、日本語の字幕が付く。ルーデウスには通じてもザノバには分からない言葉でのやり取りだ。
その背後から、どけ、と現れた白髪の女がアトーフェだ。

立派な名乗りを上げるが、ムーアと呼ばれる老兵は、玉座へは後ろから来るようにと注意する。王に威厳を持たせたい部下と自由気ままな王のいつものやり取りかと思いきや、アトーフェがいきなりムーアに剣を振るう。ムーアは吹き飛び、血の付いた兜が転がってくる。ルーデウスとザノバが驚愕する一方で、欠けたムーアの頭は再生していく。不死族同士の喧嘩にリミッターは無い。

アトーフェがキシリカを捕らえた礼にルーデウスに与えるのは、親衛隊に入る権利である。ムーアの忠告を覚えているルーデウスはいったん断るが、いらだつアトーフェに押し切られる。そんな様子を見たムーアが、しずかに首を振る。

十年間みっちり鍛えるという申し出に対し、ルーデウスは家族や病気の友人を待たせていると説明する。人族の十年は今の生活を丸ごと失うことと等しい。まともな反論が通じない様子を見て、キシリカが話の通じない馬鹿だと評すると、アトーフェは怒りを募らせる。
老兵はしぶとい
説得に失敗し、神子であるザノバが身体を張って止めに入る。闘気が凄いザノバの頑丈さを前にしたアトーフェは、北神カールマン・ライバックが妻、と正式に名乗り、剣を構える。

さすがのザノバも北神流の奥義を受けられるのか…とそのまま大人しく技を受けることもなく、ルーデウスがエレクトリックで動きを止め、ザノバが一撃を入れる。アトーフェは吹き飛ぶが、これで話が終わる相手ではない。むしろ強さを見せつけた格好で、いっそう手元に置きたがるようになる。反撃が解放につながらないのが馬鹿の馬鹿たるゆえんである。
学園に現れたバーディガーディとの決闘では、一撃を与えることが勝ちの条件になっていた。今回は、強いと認められても、こちらの望む決着にはならない。

そこで逃げるよう勧めてくれるのがムーアだ。親衛隊には自ら望んで仕える者ばかりでなく、帰りたくても帰れない者もいる。自分の二の舞になるなという声が親衛隊から出るほどだ。
だが、地下通路を使えという助言には、キシリカが待ったをかける。あそこはバーディガーディが壊したままであり、ムーアはアトーフェの都合がよくなるように話を運ぶ食わせ者だという。一緒に逃げているこの状況なら、キシリカも嘘は言わないだろう、と納得したルーデウスはその忠告を受けて、地上からの脱出を選ぶ。
原作でもルーデウスは、ムーアがアトーフェに手を焼いていることと、自分たちの味方であることは別だと考える。薬草や栽培方法を用意してくれたのも事実なので、親切がすべて芝居だったと片づけるのも違う。話が通じそうな相手だからといって、こちらの都合を最後まで優先してくれるわけではない。最低限は助ける、だけマシである。
案の定、転移魔法陣へ向かった一行を待ち受けていたのはアトーフェだった。こちらが走って逃げても、向こうには翼がある。ムーアの言う通りだった、と勝ち誇るアトーフェ。

クリフたちはソーカス草を確保している。探していた物は手元にあり、転移魔法陣が目の前にあるのに、帰ることができない。ここで本格的な戦闘を避けられなくなる。
クリフ退却戦
エリナリーゼが提案するのは、クリフだけでも転移魔法陣へ逃がすことだった。薬草を持ち帰れればナナホシを助けられるし、救援も頼める。アトーフェを前に勝ち目を探していたルーデウスの考えを、そもそも何のために来たのかという話へ戻すのが、戦闘経験豊かな彼女らしい。
ナナホシを助けたいし、自分も帰りたい、と迷うルーデウス。最善手として、ザノバとエリナリーゼがアトーフェを抑え、ルーデウスが親衛隊の追撃を止めるという分担で戦闘開始だ。なお原作では、エリナリーゼがクリフに、救援を呼びに行くのも戦闘だと言い聞かせるやり取りがある。
初手ルーデウスの岩砲弾に続いて、ザノバが投げつけるのはキシリカだ。アトーフェが臭いと顔をしかめたところへ入り込み、正拳突きを叩き込む。が、案の定効かない。吹き飛ばされるザノバ。
エリナリーゼが攻撃をつなぎ、その間に起き上がったザノバは、今度はアトーフェに組みつき、両腕で抱え込む。鯖折りに入ると、吐血するアトーフェ。不死族だから死なないが、致命的な致命傷である。
クリフが走りだすのに合わせ、ルーデウスはフロストノヴァで親衛隊を凍らせる。ところが、氷の中からムーアの詠唱が始まる。バーニングプレイスで自分の周りを解かし、他の者にも同じ魔術を使うよう命じる。勝負あったかのように見えたものの、ムーアの経験と指揮で立て直され、戦闘は終わらない。

アトーフェとの決闘をこなしつつクリフを通したい側にとっては、ムーアが同じくらい厄介だ。魔術を打ち消しても、その足までは止まらない。主に殴られても平然と仕事へ戻った老兵は、戦場でも容易には崩れず、次々とこちらの手に対応してくる。
原作のこの攻防には、岩砲弾、霧による目くらまし、風、泥沼と、さらに細かな応酬がある。霧を作る技はWeb版では氷結結界だが、書籍版では濃霧に変わっており、両版で名称まで同じではない。技の多さだけでなく、止める手を重ねても追い続ける相手だという焦りが、原作では長い攻防を通して積み上がる。
アニメでルーデウスが最後に目を向けるのは、氷が解けて濡れた地面だ。そこへエレクトリック(電撃)を広げれば、ムーアだけでなく、自分もザノバもエリナリーゼも巻き込むことになる。それでも、先へ進んだクリフを残すために雷撃を放つ。相手の防御を上回る一発を見つけたというより、味方が傷つくことも含めて引き受ける決断だった。

甲龍王の門
雷撃で倒れた後も、ムーアはクリフに向けて魔術を使おうとする。ルーデウスも意識を取り戻し、その魔術を打ち消す。自分の身体が動かなくなっても、クリフを止めさせないという役目は終わらない。ようやく遺跡にたどり着いたと思えば、今度はその中から親衛隊の兵が現れる。
最後の退路まで押さえられていたのか、絶望する一行。しかし、出てきた兵の身体は真っ二つに割れ、その後ろからペルギウスが姿を見せる。四人が必死に動かそうとしていた戦況が、別の人物の登場で一気に変わる。城で客人を迎えていた時とは違う、魔族を嫌う甲龍王の顔である。
クリフが魔法陣を抜けて救援を頼み終えたわけではない。アトーフェが送り込んだ兵は、転移先の空中城塞まで踏み込んでいた。自分の城を荒らされたペルギウスが出てきただけである。
アトーフェとペルギウスの間には、カールマンを通じた因縁があるようだ。盟約、という言葉でペルギウスをけん制するアトーフェだが、ペルギウスは意に介さない。
ペルギウスは前龍門と後龍門を開き、魔力と闘気を割く。続く手刀でアトーフェを断つ。二つの門は魔力を奪う召喚魔術で、身体を切断したのは「甲龍手刀『一断』」だ。ルーデウスたちが止められなかった相手を完封する、ラプラスと戦い、その再戦に向けて準備を整える英雄の力を見せつけられる。

それでも、アトーフェは死なない。盟約は不殺であって不戦ではない。だからこそペルギウスは遠慮なく切り伏せられる。
助かったルーデウス達だが、身体には雷撃による傷が残っている。エリナリーゼの顔や肩のやけどが生々しい。原作ではこの後、クリフが治療を担い、とりわけ彼女の傷を丁寧に治している。

ルーデウスは身体を張った仲間たちに礼を言い、走り抜いたクリフも労う。それぞれの役割を果たした戦闘は、立派なパーティ戦闘だ。これでナナホシも回復するはずだ、とルーデウスが独り言ちたところで今回はエンディングである。
次回は「ターニングポイント4」
次回は「ターニングポイント4」。いよいよ四つ目のターニングポイントまで到達した。



過去のターニングポイントに勝るとも劣らない大転換が訪れる。まずはナナホシの回復を喜ぼう。

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