「その着せ替え人形は恋をする」のアニメ版5話は、メインタイトル回収回。不安と見惚れのコスプレイベント、その帰りの電車内での新菜と海夢、という原作屈指の名シーンを、光の移ろいで見事に演出した神回だった。
ネタバレ回避のあらすじは以下。
STORY
https://bisquedoll-anime.com/story/?id=05
ついに雫の衣装を完成させた新菜。大好きな“雫たん”になれてテンションマックスな海夢の提案で、翌日のコスプレイベントに急遽二人で向かうことに。イベント初参加ながら、声をかけられ順調に進んでいく海夢の撮影。海夢を見守りながら、感慨に浸る新菜だったが……。
STAFF
脚本
冨田頼子
絵コンテ
平峯義大
演出
佐久間貴史
作画監督
助川裕彦
透けるコスプレ衣装
アバンは前回のラストのリピートから。写真を撮り、ネットにアップし、明日のコスプレイベントに行こう、という話になるまでと、少し長め。
衣装の凄さを語る中で、チュールから透けるガーターを描写するところがあり、前回で物足りなさを感じた衣装の存在感が増している。
まあ、なかなか透過を動画で出し続けるのは難しいので、すぐに元の透けないカットに戻ってしまうのだが。
原作では、ネットにアップした写真に絡むコスプレイヤー、ジュジュ様のカットが入るのだが、アニメ版ではカット。今回の話には関係ないので、まあそうだろう。
楽しさと不安
コスプレイベントの舞台は池袋はサンシャイン。早速声をかけられ、列ができていく。その後に、コスプレ会場の参加者の自由さ、楽しそうな海夢、ときて、この幸せな時間が終わってしまう不安へと話が続いていく。
原作では、まず会場に目をやってその参加者の自由さに触れ、声を掛けられる海夢、という流れになっている。これはコスプレイベントの描写で読者への説明を優先する構成だ。
このわずかな違いで、新菜の不安を描くまでの、ちょっとした緊張感が途切れないようになっている。
その緊張感の中で、新菜に対して満面の笑みを見せる海夢に、新菜は綺麗だと感じ、駆け寄ってくる海夢に心をつかまれるのだ。
雫たんの衣装は…
で、海夢が駆け寄ってきたのは、服が脱げそう、だから。乳袋を盛るためにヌーブラを2枚重ねにしたので、採寸通りに作った衣装が破れそうな勢いである。さらに厚手の生地で作ったため、熱中症になりかけるほど暑かったようだ。
コスプレをテーマにした漫画として、もう一つ有名なのが「2.5次元の誘惑」だ。こちらのヒロインコスプレイヤー、天乃リリサは、衣装作りのスキルに秀でており、動きやすいコスプレ衣装を仕上げる異能である。
連載開始は着せ恋が2018年1月、2.5次元の誘惑が2019年6月なので、2.5次元の誘惑の方が後発だ。着せ恋に続くアニメ化が期待される。
「綺麗」になった海夢
話がそれた。結局、早めに撤収する海夢と新菜。
帰りの電車は湘南新宿ラインである。
原作の車内の描写は適当でありえんくらいのロングシートがあったり、戸袋の脇の手すりがいい加減だったりと、ちょっとモヤるのだが、アニメ版は最高だった。
池袋を出て、荒川を渡り、だんだん夕方になっていく。その中で、前々日に徹夜で衣装を仕上げた新菜はうとうとし始める。
海夢はコスプレイベントに参加できた喜びを新菜に語り、あるコスプレイヤーを「キレーってやばくない」と言う。
夢見心地の新菜は、キレーという言葉にだけ反応し、半分寝た状態で「喜多川さん…とても…綺麗でした」と返す。
その瞬間、トンネルだか陸橋だかで暗くなる車内。池袋を出た辺りにはトンネルがあるが、荒川を超えた後の描写なので浦和か大宮付近の陸橋か。
海夢はかつて新菜が語っていた「綺麗」という言葉へのこだわり、「特別なものに対する言葉になって、心から思ったときでないと言えない」という新菜のこだわりを思い出して赤面する。
細かいことを言えば、車内は常に照明で明るいので、そこまで暗くはならない。顔に影が差すくらいだろう。が、新菜の「綺麗」という言葉でいきなり殴られたような、海夢の動揺が伝わってくる演出だ。
動揺する海夢のカットで今回は終わる。その着せ替え人形は恋をする。
で、次なる着せ替え人形様のジュジュ様、登場は次回のようだ。予告で「次回」だけしゃべって終わったよジュジュ様。
コメント