無職転生ロスを癒そうとPrime Videoを彷徨っていたところ、「その着せ替え人形は恋をする」が新着に出てきた。原作を読んだことがあったのでレビューはどんなもんかと見たら★4.2だった。
まあそれはよいとして、意外と「平均点」だの「そつがない」だの、原作そのままだね、的なマイナス評価で★3に落とした、なんていうレビューがあるのはちょっと残念だ。アニメ化に当たって割と攻めている方の作品だと思う。
ネタバレ回避のあらすじは以下。
STORY
https://bisquedoll-anime.com/story/?id=01
雛人形の頭師を目指す高校生・五条新菜。雛人形作りに一途な反面、好きなものが周りと合わず、中々クラスに馴染めずにいる。いつも輪の中心にいる人気者・喜多川海夢は、新菜にとってまるで別世界の住人。ある日、二人は掃除当番となり、ともに教室に残ることになるが……。
STAFF
脚本
冨田頼子
絵コンテ
篠原啓輔
演出
篠原啓輔
作画監督
小林真平、川妻智美、山崎淳
「その着せ替え人形は恋をする」のアニメ版、1話を見てみたところ割と攻めた演出で感想を書いておきたくなった。原作を忠実に映像化するのではなく、海夢と新菜いう存在が周囲に与える衝撃を思いっきり強調して描写している。目についたのは4点だ。
吹っ飛ぶ海夢
主人公の五条新菜(わかな)とヒロインの喜多川海夢(まりん)は接点が無い。 海夢の初登場シーンは教室だ。友達とじゃれた海夢が新菜が座っている机にぶつかる。そこで「ごめん、大丈夫?」と新菜を気遣い、腕に付いた墨の汚れをケガじゃないよね?と指で触れる。
この机へのぶつかり方がアニメ版はすごい。衝撃的な出会いというか、初めて会話したインパクトの演出というか、出﨑統監督ばりのストップモーションで吹っ飛んでくる。
このまま後頭部を強打するのでアニメ初見組は「なんだこの女??」となる。物心両面の衝撃とギャップ萌えのための演出なんだろうな…とは思うがちょっと攻めすぎている感がある。
ダイブする新菜
被服実習室でミシンを使っている新菜のところに海夢が来るシーン。こちらは原作では海夢に驚いてポロっと落としてしまった雛人形の頭部を拾い上げて「痛くなかった?」と人形に声をかけるのだが、アニメ版では落としそうになったところにダイビングキャッチである。
原作では落としてしまったので「痛くなかった?」=人形相手にキモイ、となるところ、アニメ版では受け止めているのに「痛くなかった?」なので雛人形に対する尊みが上がっている。そこまで推しならダイブしてでも落とさんだろう、という演出でこれはよいのでは。一応、海夢のぶっ飛びと対になっている。
海夢の下手さ
海夢が被服実習室に足を運んだのは、コスプレの衣装を作るためだ。といっても素人が本読んだだけなので基本的な裁縫の知識が無い。そこにミシンを操る新菜を見かけて、コスプレ衣装の制作を頼み込む。
新菜は海夢からコスプレ対象の衣装をスマホで見せてもらい、海夢の作りかけの衣装をボロクソにけなす。原作だと、海夢作の衣装は「そこまでけなすほどか?」という程度にしか見えない。引きの構図なので読者にとってそこまで粗が目立たない。
アニメ版は容赦ない。袖の部分をアップで映す。袖の縫い方はいかにも素人の縫い方で、うわーっ、となる。
見開き表現を超える海夢
アニメオリジナルの構図で海夢のスタイルの良さを自然の強調する構図も良かった。原作では見開き正面で右上から右下に向けて新菜のコス全身を見せているコマがあり、感情の高ぶりを生み出すだけのインパクトがある。
アニメ、というか16:9の画面で高さを強調するには、左右ぶち抜きをやるしかない。それを思い切ってやっている。同時に新菜の呆気にとられた顔を股の間に映しているのがとてもいい。
ちょっと残念だったのは脚の芝居。海夢がもじもじしているところを脚だけ映す場面があるのだが、作画が絵コンテに追い付いていなかった。
といっても、もじもじしている表情が見たい、という受け手の欲求を掻き立てるタメのシーンなので、問題ないといえば問題ない気もする。京アニの、というか山田尚子監督のお家芸なので次回以降に期待しよう。山田監督はフリーで「平家物語」をやっているが、ゲスト演出でやってくれないかな… 平家物語も見たけど気が付いたら1話終わってたのですごい。
さて着せ恋、2話を見て感想を書きたくなるかどうか、まだ読めない。
その着せ替え人形は恋をする 1巻
コメント