無職転生の第23話「目覚め、一歩、」は、1期の最終回。なんと脚本に原作者の理不尽な孫の手先生が参加し、ルディがエリスとの破局から立ち直る理由が原作から大きく改変された。布石は打たれた。2期の第1話が待ち遠しくてしかたない。アニメ版こそ正史だ!
ネタバレ回避のあらすじは以下。
突如、手紙を残してエリスがいなくなった。 人生をやり直し、様々な出会いや旅を経験して変わることができたと思っていたルーデウスだが、エリスを失ったショックで、再び前世のように引きこもってしまう。 ルーデウスがなにもかも諦めかけたその時、彼の脳裏に母・ゼニスの思い出がよぎって……。
https://mushokutensei.jp/story/23/
家族の物語へと回帰する
アバンはまさかのエリスとギレーヌから。ルディと別れた後、野宿の旅を続ける様子が描かれる。ルディからのプレゼントである猫耳ローブをまとい、目を細めて日の出を見る。何か吹っ切れたような表情だ。
対照的なルディ。テントに引きこもり寝入る中、フィットア領の難民キャンプでは復興の農作業が始まっていた。日差しがテントに差し込んでも起き上がれないルディ。エリスからの手紙、床に落ちたエリスの髪、思い出を壊さないように、ということなのか、すべてそのままだ。
異世界でも引きこもってしまったルディ
Aパートは前世の男の回想から。高校時代のいじめのきっかけのようだ。クソガキに割り込みを注意したら、いじめのターゲットに。これまで何度か出てきた全裸に剥くいじめのシーンがつらい。引きこもり始めた前世の男。両親は励ましの言葉をかけるも、もう立ち上がれない。
異世界に戻り、ルディのシーンに。執事のアルフォンスが訪ねてくる。井戸作りや木材の運搬、住居の建設と、男手の不足を理由に失意のルディを何とか引っ張り出そうとする。思いやり、という体ではなく、働かるざる者食うべからず、というだけの話だ。グレイラットの名が無ければそれこそ追い出していただろう。周りの士気にも関わるからだ。
出奔したエリスは転移先で死亡したことにした、とアルフォンス。辛いのはあなただけではない、と暗に働かないなら出ていけ、という態度をとる。無力感に苛まれるルディ。
どうすりゃよかったんだよ、とつぶやき、ベッドから落ちる。そこにあるエリスの髪の毛を握り締めるルディ。
アニメ版と原作のエリス描写の違い
一方エリスは魔物を倒しつつ旅を急ぐ。ルイジェルドもまた魔物を倒し、感謝されているシーンが挟み込まれる。デッドエンドの今ということか。
エリスはギレーヌに、ルディの凄さを語る。ルーデウスが居たから安心できたこと、死ぬなんて思っていなかったこと。そして一夜を供にしたときに握り締めたルディの手が、自分よりも小さかったこと。そんな存在に自分が頼り切っていたことが、ルディの許を離れた理由なのだ。
「ルーデウスを愛してるっ!」「今度は私が、ルーデウスを守るのっ!」と表情はあくまで前向きで明るい。
いやいやいやいや。ならそう手紙に書いておけよ、と全俺が思ってきた。しかしアニメ版では、それはちょっと言いにくいな…と自然に思わせる演出になっている。
原作の印象は「まあエリスは言葉足らずだから()」程度だが、アニメ版では、年下に頼った自分が恥ずかしい、という理由を告げないのは、ルディを傷つけないための配慮だわな、くらいには思えるようになっている。
ルイジェルドは旅の道中、魔物を倒したことで感謝の意を伝えてくる村人たちに、スペルド族であることを明かす。額に石みたいなのがあるって本当か?と逃げ出そうともしない村人に話し、額の鉢金をめくってみせる。
私が怖くないのか?と尋ねるルイジェルド。スペルド族は子供を食べてしまうぞ、という定番の脅し文句をネタとして明るく話す村人に、子供は食べん、というルイジェルド。村人たちは生真面目なルイジェルドが冗談を言ったとでもとったのか、笑い出す。
ザノバ、ギース、トーナとテルセナをチラ見せ
CM明けはこれまでの登場人物の今がサラッと。
まずザノバ。馬車に揺られてどこかに向かうなか、ロキシー人形を崇めて涙を流している。またお会いできると信じていますぞ!と絶叫して出番は終わり。
次にギース。どこぞの砂漠を旅しており、先輩がいれば水を出してくれるのに~と嘆いている。
続くはドルディア村。ギュエスと剣の稽古をしているトーナ、聖獣様の脇でそれを眺めるテルセナがチラッと出る。
いきなり海のシーンかと思えば、魔大陸のようだ。デッドエンドに助けてもらった魔族、トクラブ村愚連隊のクルトとバチロウだ。
ここで現世の男のシーンが挟み込まれる。部屋は散らかり始め、もはや声もまともに出せなくなっている。
ロキシー、キシリカからゼニスの居場所を聞く
と、またシーンは戻って魔大陸。キシリカとタルハンド、ロキシーが飲み比べをしている。
酒代が払えずに簀巻きにされたキシリカの代わりに、お代を払ってあげるロキシーさん。お約束の褒美は魔眼の下賜、なところ、ロキシーはルーデウス・グレイラットの家族の居場所を探してほしいとキシリカに伝える。あまり本気にはしていない。
ここからは、キシリカの千里眼をトリガーに、他の面々の話に移る。
ミリシオンにいるパウロの許にたどり着くアイシャとリーリャ。
ノルンは母親の姿を探すが、まだいない。母親と一緒のリーリャとの違いに、涙ぐむノルン。
ゼニスの居場所はキシリカでもよく見えないらしい。どうやらベガリット大陸の迷宮都市、ラパンにいるようだ。
ルディは中央大陸で落ち込んだ顔をしているという。
キシリカと別れ、エリナリーゼとタルハンドと合流したロキシー。ベガリット大陸の件を聞いたらしいエリナリーゼさんは、生きているのになぜ連絡を取らないのか、と不思議がる。さらにルディは大丈夫かと気に掛ける。
ルディは自分の力で立ち直れるはずです、とロキシーはあまり心配していないようだ。
ゼニスを助けに、ルディは立ち上がる
再び、前世の男の回想か、ルディの今の心象風景か。手を差し伸べてくれる人もいなくなった、と絶望する。被害妄想や、やればできる、という言い訳を繰り返し、人間、そう変われるものじゃない、と再び目を閉じる。
ここでパウロとの剣の稽古をするルディを眺めるゼニスの描写が差し込まれる。稽古から戻り、ゼニスと話すルディは、ゼニスがあくびをしたのを見て、自分が片付けるから休んでいてください、と話す。
「支度が出来たら、起こしてくれると助かるわ」
「必ず僕が責任をもって起こしますから」
「ありがとう、ルディ」「ルディ、大好きよ」と、声をかけるゼニス。その慈愛に満ちた視線たるや。
夢か、回想か。目を覚まし、ゼニスを探さないと、と立ち上がり、テントを出るルディ。前世の男もまた、家から外に出る。
原作者、理不尽な孫の手先生が脚本に参加してる!
で、特殊エンディングに突入するのだが、なんと、23話は脚本に理不尽な孫の手先生が参加している!!
今回、ルディを気遣うエリス、ルディが立ち直るきっかけとして家族を前面に出す描写、といったアニメ版オリジナルの解釈ともいえる脚本と演出がさく裂していたので驚きっぱなしだったのだが、腑に落ちた。これ、アニメ版が正史でしょ。
初登場で喋りまくり、無言のフィッツ
エンディング後、まだ23話は終わらない!
アスラ王国のシーン。アリエル王女が白髪のエルフに何やらルディのことを訪ねているようだ。5歳で水聖級魔術師、しかも無詠唱って、と呆れたような声を出している。盛りすぎで面白い、と騎士のルークもまた信じてはいない。
これは作り話ではないと、そう言いたいのですね?というアリエル王女に答えるのは、白髪の耳長族の少女である。まあもうバレバレなのでサラッと書くとシルフィである。クレジットではフィッツになってるが、声優が「???」ではなくて「茅野愛衣」なのでいいでしょう。まだアニメ版では出ていないが、通り名は「無言のフィッツ」である。
あなたと彼の関係は?というアリエルに、シルフィは、恩人であり、師匠であり、友達でもあるけれど、一番尊敬している人です、と言い切る。
学園編への布石は打った、2期はよ
いやー、終わりました1期。しかも原作では新たに1巻かけて立ち直るようにしたルディの復活を、わずか1話で描いて見せた。
商業版だと小説7巻でもがくルディを描き、Web版よりもエリスとの破局による落ち込みと浮上を細かく描写している。8巻からWeb版と同じ進行になる。
しかし2期の1話目、第24話を景気よく迎えるには、ルディは復活しておく必要があった。このまま7巻を省略するかどうかは不明だが、構造上は、
・冒険者として修業に勤しむルディの許に、エリナリーゼさんがゼニスの居場所を告げに来る
というシーンから始められるだろう。
問題は、ルディの復活のきっかけとなる要素としてゼニスを前面に押し出したことで、ベガリット大陸に直行せず、魔法大学への入学を決める心の動きをどう描くのか、よく分からなくなった点だ。
Web版でも原作でも、ゼニスより魔法大学を優先するのはヒトガミのお告げの威力が大きい。ルディはエリスとの破局でEDになってしまい、それが魔法大学で治る、と聞いて魔法大学行きを決めるのだ。説得力はあるが…これでいいの?という。
Web版のこの動機の弱さは、小説版で1巻をかけてEDの悲惨さを強調することでやや強められている。立ち直りのきっかけはEDによって砕かれ、そこからもう一度再起を図っていく。構造を変えずに補っている。
ところがアニメ版では、どうもそうしない気配がある。EDの治療のために魔法大学に行く、という理由付けを、きっとアイデアで解決するか、別の動機にするのだろう。そうしないと、ゼニスを最後の切り札に持ってきた意味がない。
一歩、は踏み出したがやはりそう立ち直れるものではない、と持ち上げて落とすのか?
また理不尽な孫の手先生が脚本に参加し、2期第1話で魔法大学入学への経緯についてうまく折り合いを付けてくれるのか。2期が待ち遠しくて仕方ない。
追記:2期は2023年放映開始
2期の放映開始が2023年になることが正式発表された。ティザーPV付きである。
これまで1~11話を1期、12~23話を2期と呼んできたが、公式が2期と呼んでいるので合わせることにした。となると、2023年1~3月、2023年10~12月が2期、となるんだろうか。
追記2:2期は番外編0話からスタート
2期、始まったのだがフィッツ側を描く番外編を「第零話」としてスタート。1話から小説版7巻が始まった。学園編に入るアニメ版の流れ、私気になります。
コメント
2期ではなく2クールが終わったのでは?
間違えてたらすみません…
コメントありがとうございます。そうですね。クール間が空いているので1期、2期、という言い方にしています。無職転生は最後まで作り終えることを目的とした制作体制が取られているので、売り上げを見て次があるか、無いか、という時に使われる「期」はそぐわないかもしれません。次は2022年内に来ますかね…
公式から「2期」という表現で2023年放映の予定が発表されましたね。1月なのか4月なのか…