エリスに好感を持たせるための正解とは
無職転生の第5話「お嬢様と暴力」は、死と隣り合わせの世界を五感で演出した神回だった。斬られそうになったバクバク感。すんでのところで助かった安堵感。そしてヒロイン3のエリスの凶暴さと律儀さの共存に感じるバランス感。こんな気持ちになる演出は貴重だ。
ネタバレ回避のあらすじは以下。
パウロによってロアの町に送られたルーデウスは、パウロの知り合いであるギレーヌに連れられ、ボレアス家の息女・エリスの家庭教師を務めることになった。しかし、そのエリスは一筋縄ではいかない暴れん坊お嬢様で、ルーデウスは傍若無人なエリスを躾けるため、ある計画を実行するのだが……。
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シルフィさん、5年間の退場が決まる
オープニングはギレーヌと馬車に揺られるルディのシーンから。
ギレーヌさんからは「ギレーヌでいい」と言われるルディさん。ギレーヌから手紙を投げ渡され、声に出して読め、と言われる。そう、ギレーヌは文字が読めない。
ギレーヌにベッドの上でしか勝てないパウロ氏
パウロの手紙には、仕事は9歳のお嬢様の家庭教師であること、ギレーヌも一緒に習いたいこと、12歳までの5年間は一切の接触を禁じること、シルフィエットに依存し始めているのでそうしたこと、などが書いてあった。ギレーヌは筋肉ダルマかつ俺の女呼ばわりされる。パウロ氏、ギレーヌにはベッドの上でしか勝てないそうだ。かつてのパーティメンバーだし。
手紙の読み上げを終え、シルフィと1年間会えないという事実にがっかりするルディの嘆息でアバン終了である。
山猿ことエリス・ボレアス・グレイラットの洗礼
屋敷に着くと、ロアの街の町長というフィリップ・ボレアス・グレイラットの応接を受ける。
原作だとまず領主のサウロスが出てきて豪快な対応をされるのだが、そこはややこしくなるのでカットかな。後で出てくるんだろうか。原作ではサウロス仕込みの礼儀作法が彩りを与えるが、まあ蛇足なのでいらない気もする。
少しだけワガママ、という娘を紹介されるルディ。フィリップにさっき教わった貴族の挨拶を披露するも、開口一番、
「何よ、年下じゃないの!!(怒)」といきなりけんか腰だ。歳は関係ない、とルディが切り返すと、エリスは生意気よ、といきなりルディの頬を叩く。
ルディも負けじと叩き返すが、エリスの反撃は拳である。
そしてマウントを取り、ぼこぼこに。ルディは風魔法でエリスを跳ねのけると、一目散に逃げる。すりつぶしてやるわ!!という罵声から逃れ、フィリップと再度の面接に。
(家庭教師という仕事を)諦めるか、というフィリップだが、のこのこと帰れないと踏ん張るルディ。何か策でもあるのか、と興味深げなフィリップだ。原作で語られるフィリップの心情は、どうせ続かないけどパウロの息子だから館には置いてやろう、程度のものだ。魔術の才能云々も親バカだろうと大して期待していない。
ピンチを救う出来レースがデスゲームに
エリスを懐柔するために、一芝居打ってみてはどうか、と話すルディ。仕込みの暴漢に襲わせようとするも、何の手違いかガチの盗賊にぼこぼこにされる。迫真の演技どころか、普通の誘拐である。騒ぐエリスをストンピングで黙らせるほど。やり過ぎじゃないか?と引くルディさん。原作並みの半殺し描写で、これアニメ初見組は呆然なのでは?
エリスをヒーリングで治すルディに「ちゃんと治しなさいよ」と言うエリス。ここのルディはあえて完治させず、またエリスが大声を出さないように、服従するように加減して治療している。
ルディが外の声を伺うと「あまり傷つけるんじゃねぇよ」「最悪、男のガキだけでもいいんじゃねぇか?」という不穏な会話が。さすがにガチだと気づくルディさん。
土魔法で窓の鉄格子の周りを崩し、脱出口を確保したルディは「死にたくないので逃げます」とエリスを置き去りにしようとする。
助けなさいよ、というエリスの声に、再度うるせえ、黙れと盗賊たち。ドアを開けて入ってこようとするも、ルディの土魔法でドアを抑えてある。
暴れない、大声を出さない、この2点を約束できるかとエリスに問うものの、できるの一言が言えないエリス。原作だとこくこくとうなづくのだが、アニメ版はそこは映さず、エリスがどう答えたのかは描かず、盗賊たちが部屋に突入すると格子の外れたドアがある、という光景でシーンを終える。
約束するまでが長いエリスさん
逃げ出して街の路地裏に出ると、エクスヒーリングでエリスを完治させるルディ。とたんに大声を出すエリス。なんであなたとの約束を守らなくちゃならないの、と仁王立ちだ。
ではさようなら、と立ち去るルディに、ふん!と強気なエリス。そこにさっきの盗賊たちがルディとエリスを探している声が聞こえ、ルディを追いかけるエリスさんだった。
追手が来る中、馬車で逃げ出す二人。さすがに声を潜め、大人しくしているエリス。
約束を守るお嬢様を嫌えるか
何とか追手に見つからずに、ロアに着くものの、使用人がグル。エリスは脇道に引っ張り込まれ、人質状態に。ルディは魔法で対抗しようとするも、前方にエリスを抱える盗賊たち、背後に裏切った使用人と、窮地に陥る。この使用人、エリスにいいようにされていたようで恨みまくりである。
ここでエリスはまた騒ごうとするのだが、ルディを見てなのか約束を思い出してなのか、自分の口を両手で抑えて黙る。約束は守る子なのだという細かい芝居がよい。
だって原作だとまた騒いだのかあっという間の猿ぐつわで黙らされているからね。ところがアニメ版は自ら黙るの。しかも別に殴られるのが嫌だという演出ではなくて、口をふさいだ後に剣を突き付けられる。
ファイアボールを準備するルディに対して、仲間に付かないか、と誘う悪党ども。報酬はアスラ金貨100枚という。魔法大学なら10人は入れる金額らしい。そんな会話に口を抑えたまま騒ぐエリス。それでも約束は守るらしい。
ルディはまだ魔法で切り抜けられると舐めている。エリスを脅す余裕がある。それでもお金より大事なことに思いを馳せるルディ。ニート時代の狭い経験でなら分かる、という杉田ボイスの答えは
「金じゃデレは買えないんです!」
はい。エロゲでした。
ファイアボールを頭上に花火のように打ち上げるルディ。拘束されながら目を輝かせるエリス。
土魔法とファイアボールで相手を圧倒するルディ。しかし相手は北神流、アニメ版では説明は無いが上級剣士、つまりパウロと位は同じだ。岩砲弾やファイアボールを剣で薙ぎ払い、泥魔法で足を拘束されながら剣を投げつけてくる。
北神流には剣を投げる技がある、とパウロに聞いていたルディは、回転しながら迫る剣を呆然と眺める。
そこに屋根を走り駆ける人影が。ギレーヌです。原作だと花火風魔法で気づいていきなり駆けつけた、という描写なのだけど、アニメ版では獣人ならではの疾走を見せる。屋根伝いに最短距離を一直線に進む。動きは狼のそれ。これは神演出&神作画でしょう。鳥肌立ったわ。
ギレーヌに一刀両断された盗賊たち。光の太刀という技で、アニメでは光のドップラー効果と衝撃音で耳がキーンとなり、音が遠くなる演出が入る。視覚効果で光の速さと音速を超えたソニックブームを描くことで、余計な説明台詞を入れない。良い。
エリスの約束と褒美
屋敷に着くと、エリスをフィリップが出迎える。
「家に帰るまでって約束だったんだから、もうしゃべってもいいわよね!」
と話し始めるエリス。ルディは失敗か…と自省し、仕込みの族に襲わせるという策に溺れてあわや死ぬ寸前、ギレーヌが来なければ死んでいた、と落ち込む。
まあ、エリスは約束に対して律儀なところを見せているのだが、今のルディにそこまで理解する余裕はない、ということだろう。
背を丸めて立ち去ろうとするルディに、エリスは
「待ちなさい、特別に、エリスって呼ぶことを許してあげるわ!」
と呼び止める。「ここで働いてもいいってことですか…?」と驚くルディに、相変わらずの「ふん!」。答えがイエスであることに得心したルディが「ありがとうございます、エリス様…」と言うと「エリスでいい」とエリスさん。
原作だと、賊を仕留めたギレーヌにルディが「ギレーヌさん」「ギレーヌでいい」という冒頭の天丼が入り、エリスはそれと同じことをルディに言う、という展開だ。子供だから真似しているのね、となり、エリスのデレの効果が落ちてしまうきらいがった。
アニメ版では、ギレーヌの天丼は捨て、エリスの約束とデレに脚本をまとめた。こういう脚本はなかなか無い。そうでなければこうして毎週感想を書くこともないのだけれど。
結果的にエリスを懐柔したことで何とか丸く収まった。生まれて初めての職に就けたことを喜ぶとしよう、というルディのモノローグでエンディングへ。無職の終了だ。さっぱりとしているが毎回テーマに沿った終わり方をしようという心配りが感じられる。
ヒロイン3との日常回へ
次回は「ロアの休日」。家庭教師になったルディと、ルディの休日が描かれるはず。4話で1巻のペースだと、次の6話と7話が比較的平和で、8話でアレが来るか。いや、6話で日常回をまとめて、7話でアレか。興味は尽きない。
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