その着せ替え人形は恋をする 第3話「じゃ、付き合っちゃう? 」ネタバレ感想 伏線の海夢

「その着せ替え人形は恋をする」のアニメ版3話は、伏線回にふさわしい脚本と演出で原作を超える「奇麗」な布石を打ってきた。海夢というキャラクターを一から丁寧に魅せていくアニメ版には感謝しかない。初めて鳥肌が立ったのでこれは神回と言って差し支えないだろう。

ネタバレ回避のあらすじは以下。

STORY
コスプレ衣装作りをきっかけに、少しずつ交流を深めていく海夢と新菜。学校でも変わらない態度で接してくれる海夢に対し、新菜は嬉しさを感じつつも、自分は不釣り合いなのではと周りの目を気にしてしまう。そんな新菜を、海夢は衣装の材料探しの買い物へと連れ出す。
STAFF
脚本
冨田頼子
絵コンテ
篠原啓輔
演出
佐竹秀幸
作画監督
大成麻子、氷室陽、佐竹秀幸

https://bisquedoll-anime.com/story/?id=03

3話はコスプレの衣装作りのために買い出しに行くショッピング回である。

雫たんコスプレの衣装をゲームで研究し、設計図を描いた新菜。学校で海夢に友達として話しかけられるようになるも、気後れして避けるように帰ろうとしてしまう。そこを海夢に見つかり、半ば無理やり池袋への買い出しに付きあわされる。

新菜は海夢を避けた理由として、海夢と絡む新菜を見て「付き合ってんの?」的な声が聞こえてきたからと説明する。海夢は「じゃ、付き合っちゃう?」とからかった後に、池袋に連れていかれるわけだ。

さてこの3話、見どころは海夢の礼節と絢爛さを印象付けるクライマックスの演出だ。

新菜の「本気度」を称える海夢

池袋はユザワヤの店内で、雫たん衣装の三面図を片手に素材を選ぶ新菜と海夢。海夢はその三面図を「全部五条くんが書いたの!?」とほめたたえる。

みっちり

原作では「全部」という言葉は無い。「絵うまいね!?」というポイントを落とした小さめの吹き出しが心の声的に書かれている。原作では三面図を起こすという作業とその質を「凄い」という海夢なのだが、アニメ版では「全部」という言葉から、新菜の絵を海夢が巧いと評価する軸があえて落とされている。

おや?、と思ったが、実は海夢という人物を描くにはこちらの方がすっきりする。

前回、服をきちんとたたんだカットを挟み込むことで、海夢の礼儀に対する基本姿勢を前面に出してきた。今回は、海夢が衣装代を新菜に現金入りの封筒で渡すシーンで、両手で渡して両手で受け取る、という描写で再度描いてきた。原作では両手で差し出す海夢の描写だけなので、アニメ版の「対価の象徴としての現金を受け渡す」というカットは関係の描写として好ましい。

岩槻が舞台なので大宮銀行(架空)

大ざっぱな海夢

ユザワヤを後にした新菜と海夢は、ウィッグ専門店のスワローテイルに向かう。ここで海夢は雫たんの髪色を「黒」として商品を選び始めるのだが、新菜は「イメージカラーは紫」「黒に見えて艶が紫」と指摘してディープバイオレットのウィッグをチョイスする。

これに対して海夢は呆気に取られて「…だよね!」と答える。

大ざっぱな時のデフォルメ顔

この「実は大ざっぱ」な描写から、さっきの「全部五条くんが書いたの!?」への修正がファインプレーだったことに気づく。海夢は雫たんへの愛、コスプレへの情熱は本物だが、技巧は伴っていない。なのに巧い、下手、を感想として述べるのは、キャラ描写としてもそこまで不自然ではないものの、構造としては弱い。

仕上がった「奇麗」の伏線

買い物を終えた新菜と海夢は、海夢のおごりでラーメンを食べる。その帰りしな、コスプレイヤーをスマホで観ながら海夢は「キレー」を連発する。対する新菜は妙に無口だ。これは「奇麗」という言葉を、かつて子供のころに雛人形に感じた感情以外に使いたくない、という新菜のこだわりのせいだ。

この新菜のこだわりを、海夢は肯定する。肯定した上で、ラーメン代のおごりを申し訳なく思う五条に、ヌル女をプレイして三面図を起こせるまで入れ込んだことに対して「したかったんだよ、お礼」と返す。

奇麗、である
限りなく奇麗に近い赤面
この前後で2秒ほどセリフにタメがある

このシーン、原作でも夜の街の灯りに照らされた風の作画だ。アニメ版では、舞台を陸橋の上に設定することで、行きかう車によって動的にライティングされる場面として演出している。ヘッドライトに照らされる海夢はとても美しい。このアニメで初めて鳥肌が立った。神回である。

新菜が海夢を「奇麗」と思っているのではないか、というのは原作でもその表情から明らかなのだが、アニメ版ではさらに上を行くシーンに仕上げてきた。着せ恋アニメ版は海夢が食い気味なのであまりタメを使った演出を多用しないのだが、この場面では海夢に見惚れる新菜に比較的たっぷりと時間を割いている。

このシーンを心に刻んでおけばおくほど後から大変な思いをすることになるので、原作未読組は覚悟しておいてほしい。

3話までで脚本と演出の本気度は十分に伝わった。強いて言えば音楽とのシンクロをするだけの余裕が無いかもしれない。これは楽曲のせいではなく、タメを十分に作れない海夢のキャラと尺のせいだろう。逆に言えば、その賑やかさは海夢の物語には合っている。

今はアニメ化記念なのか1巻無料で読めるみたい。

その着せ替え人形は恋をする 1巻

コメント

タイトルとURLをコピーしました