言われてるよりマシっぽい「ローレライ」について

 「ローレライ」の予告ばかりで気が散って仕方がない。見に行くかと思い参考にしている超映画批評を見ると,見事に今週のダメダメを頂いている。一気に外出機運が霧散するも原作の劣化ぶりをこの目で確かめようと考え中。「亡国のイージス」を映画化前提に書き直した昇華作である原作がどこまで貶められているのか。興味は尽きない。

 結局見てきた。レイトショーで1200円。この値段なら言える。結論は見てよし。

 原作を読んでからだいぶ経っているので記憶かあいまいなせいか,頭を空にして見られたような気がする。全二巻の長編のエッセンスを比較的分かりやすく映像化しているのでは。少なくとも超映画批評が言うほどダメダメではなかった。

 ただ「言うほど」というだけで,ダメダメなポイントは大きく二つ。映像のチャチさと,軍令部パートの学芸会だ。

 まずCG。チャチさ,フィルムを効果的に使ったつもりがチープにしか見えないという哀しさ。すべてにおいて全然重厚感がない。伊507のデザインが変わっているだけにその効果は絶大だ。おもちゃ同士が戦ってるようだ。人がゴミのようだ。石黒がムスカのようだ。しかも予算の関係か駆逐艦しか出てこない。タスクフォース呼ばわりするくせに護衛空母の一隻も出てこない。「なんて物量だ」と言わせているのに駆逐艦しかいない。ある意味ぜいたくだ。もちろんことごとくチャチい。ローレライシステムのディスプレイは砂鉄という設定なのだが,全然砂鉄に見えない。そのくせ動きは原作通りの砂鉄だ。3次元ディスプレイを当時の技術で作るというリアリティが台無しだ。この辺りを我慢しながら2時間座っているのはそれなりに苦痛であった。役所広司がアップになるとホッとする。そこだけがリアルだ。役所広司一人でもっている映画だ。

 ドラマとして致命的なのは軍令部のパート。あれだけの重鎮を揃えているのに激しく間抜けな学芸会になっている。伊507,米太平洋艦隊,それに続く三本柱があの体たらくではデスラーもとい伊武がもったいない。

 以下はネタバレなので未見の方は注意されたい。

 いちばん引っかかるのは,東京を目標としたB29が発進してしまう下りだ。和平交渉の使者が暗殺されて無条件降伏の拒否と見なされた結果なのだが,普通にあり得ない。原作もこんなんだったか? 

 パウラが口ずさむ歌がモーツァルトの子守歌というのも物足りない。「椰子の実」でなければ日本への郷愁を思わせるものがなくなる。ここぞというシーンで椰子の実が流れたら全米が泣いた。間違いない。というか全米公開を狙ってるだろ亀山。なんだあの冒頭は。ラストは。いやらしい奴だ。交渉人もコケてしまえ。

 新型爆雷ことヘッジホッグ。原子爆弾は初出から原子爆弾なのにヘッジホッグは新型爆雷。観客に分かりやすくするのは良いけど萎える。これまた予算の関係か,ヘッジホッグの飽和攻撃ぶりが中途半端。見せ場のくせにけちってどうする。むしろ役者を削れ。

 軍事ネタで我慢ならなかったのは,冒頭で駆逐艦がいきなりの魚雷発射。他は許せてもそれだけは止めれ。伊507だけでなく打ち合ってどうする。江畑さんなら最初のあれで席を立つぞ。スクリーンに変な形の影が映るぞ。亡国のイージスに期待しているのでもう寝る。

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