横山秀夫-「半落ち」

 文庫になっていたので行き帰りの車内で読了。罪は認めるがそのすべてを明かさない――「半落ち」。何かを守るためにある部分だけは頑なに黙秘を続ける梶。そんな梶を乗せる,取り調べから服役までのベルトコンベアを回す登場人物は皆もの悲しい。

 逸品の警察小説であるのは間違いないが,最後の謎解きのカタルシスは他の横山作品に劣るような気がしないでもない。理由は分かっている。要介護の父を持つ裁判官藤林の存在だ。感動の種類を作為的な興奮から冷静な激情に変えるために,あらゆる明暗灰色を描写し尽くすところが心憎い。

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